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第五話



「い、痛い!嘘でしょ、ただの弾丸が、私の肩を……!」


 バトルフィールドには、焦げたグラウンドと流血する肩を抑えるクリス。そして、拳銃を両手で構えながら近づく男。


「クリス、お前の負けだ。その傷じゃ、魔術はロクに使えないだろ」

「貴方……まさか、魔術起点を狙ったの!?」


 魔術師は魔術を行使する際、全身の五か所にある魔術起点をもとに身体の魔素を活性化させ、魔術を起動する。

 その場所は人それぞれ違うし、本人も滅多なことがない限り他人には教えない。

 どうやら、五分五分の賭けも当たったようだ。


「なんで……私の魔術起点をっ!」

「そんなことはどうでもいい、それよりももう終わりだ」


 そう言って、拳銃をしまいクリスへ近づいていく。クリスはショックと流血で、立ち上がれないようだ。

 クリスの元へ行くと、まだ反抗的な目で噛みついてきた。


「魔術を使いなさいよ!腰に差してる刀だって、魔術で鍛えたものではないでしょ!」

「この刀は護身用だ、基本は抜かないんだよ」

「拳銃だって、そんな寂れたオールドウェポンがなんで私の焔を……」

「ほら、立――――っ!!」







 背筋が凍った。訳も分からないまま、すぐさま村正を抜き、間髪入れず後ろに向かって一振り。

 パキンッ!という魔術が瓦解した時特有の音を立てる。

 後ろを振り向き、よく見ると魔術の弾丸のようなものだ。

 どこからか、狙撃をされている――――ッ!







「まさかIMRO……?」


 村正を鞘に納めながら、狙撃スポットを探す。だが、敵は出てこない。


「一体、何が――――」

「その隙、貰ったッ!」


 呆けている俺の足が、大きく蹴飛ばされる。そして、そのまま空中に浮いた体を、かかとで地面にたたきつけられた。

 そういえば……まだ試合は終わってなかった……

 容赦なく地面にたたきつけておきながら、心配そうに見つめるクリスの顔がだんだんブラックアウトしていった――――。










「ううん……」


 視界がだんだんとはっきりしてくる。目の前には知らない天井に知っている顔。

 心配そうにしていた顔は、俺が起きたことに気付くと嬉しそうな表情に変わる。


「だ、大丈夫?」

「あ、あぁ……」


 意識もはっきりしてくる。確か、俺はクリスと戦い、何者かの襲撃を受けた。

 そして、たぶんここは保健室あたりだろう。

 赤髪が目立つクリスは、嬉しそうだった表情をすぐに険しくさせ、椅子から立ち上がる。


「ふん、早く授業受けなさいよね」

「待て、クリスのけがは大丈夫なのか?」


 立ち上がって出ていこうとしたクリスを引き留める。俺は脳震盪あたりだろうがクリスの傷は大きい。


「治癒魔術よ、基本はこれで治すの。貴方は何故か効きが悪かったけど」 


 そう言って、保健室を出ていく。

 時計を見ると、既に昼休みの時間だ。わざわざ看病してくれていたということは、やはり根は悪くないんだろう。

 俺も立ち上がり、保健室から出ていくとしよう。


「待ちなさいフシミくん」


 突如、声を掛けられる。

 振り替えると、そこには明らかに保険の先生らしき人が立っていた。 

 アルミ製の机に置いてあるパソコンを弄りながら、こちらを一瞥する。

 てっきりクリスだけかと思ったが、そういうわけでもなかった。


「貴方とクリスの試合、見せてもらったわ。面白かった」


 抑揚のない声で淡々と告げる。色素の薄さも合わせて、クールさがにじみ出ている。


「流石は未悠の秘蔵少年、手負いといえどクリスも鎧袖一触(がいしゅういっしょく)とはいかなかったみたい」

「未悠さんのことを知っているんですか?」

「もちろん、ここの保険医の空ケ峰羚(くうがみねれい)


 握手を交わす。羚先生にじっと見つめられると、何かを見透かされているような気がしてくる。


「……貴方、身体に魔素が構成されていない……?」

「何か言いましたか?」

「――いえ、挨拶をしてみたかっただけよ」

「は、はぁ……それじゃ、ありがとうございました」


 扉を開けて廊下に出る。昼休みだ、飯を食わないと。




「――――気をつけなさいね、『虚無の申し子』」

 

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