第四十話
のちに聞いた話では、志麻さんからの疑いが晴れるまでは参加しろとのことだ。
確かに、それが一番手っ取り早いかもしれないが、少々強引ではないだろうか。俺の自由意志はオークションで安売りでもされているのか。
と、そんなことを思い返しつつ、ニヤついている加苅の顔を押しのける。
「情報なんか流せないぞ、ただでさえ俺は疑われてる身なんだ」
「大丈夫だって、俺が無実を証明してやるからさ、ヘッヘッヘ」
ここまで我欲に満ちた大丈夫は聞いたことがなかったかもしれない。
これはなだめるのに苦労しそうだな……。
「加苅 条!」
そんな時、一人の人物がやってきた。そしてピシャリと。
「服装の乱れ、禁止されているアクセサリー、更に悪事の話まで!」
雷鳴の如く、一瞬にして力強く、加苅の欠点を注意して見せた。
その人物は、片手にはクリップボード、右腕には『風紀委員』という腕章を携えている。
黒いセミロングの髪をパサパサ揺らしながら、加苅に次々と注意をしていく姿はまさに雷神。
そして、一通り注意し終えたかと思うと、次は俺の方へ釣り上がった目でにらみつけてきた。
「伏見和佑、いますぐ会議室へ来なさい」
***
樫原学院教室棟最上階まで上ると、そこは一本の廊下と大きな両扉のみが存在していた。
俺をここまで連れてきた『風紀委員』であるだろう人物は、俺へ一言も声掛けずに先へズカズカ進んでいく。
窓もない廊下の両側に様々な人物の写真が飾られている。中には有名な卒業生もいた。
「中へ入ったらくれぐれも無礼な態度をしないように、皆学院屈指の実力者なのよ」
「あぁ、分かってるよ」
扉の前に立つと、にらめつけながら忠告してくる。
まるで、俺が無礼な奴だとでもいうようにだ。
「副会長、お連れいたしました」
彼女が扉を開けると、そこは一面ガラス張りの巨大な会議室だった。
円卓を囲むのは、総勢十名の生徒。空いている席の一つは案内してくれた彼女の、そしてもう一つは円卓の中心席だ。
ここが樫原十二賢者会の会議室、学院内のみならず世界が期待する魔術師の集会所。
もちろん、クリスやイリス、未納さんもいる。それに、出雲悠馬も座っている。出雲姉弟揃って賢者会の一員らしい。
「お待ちしてましたぁ、伏見和佑君~」
一人立ち上がったのは、樫原十二賢者会副会長、志麻さんだ。
予想だが、一つある空席は会長の席だろう。その欠員補充という建前で、俺を監視下に置こうという算段か。
「あまり硬くならないようにしてくださいねぇ」
「は、はい……伏見和佑です、一時的にですがよろしくお願いします」
「席は牧瀬ちゃんの隣にしてねぇ」
「わ、私ですか!?」
と、驚いたような返事を返したのは、先ほどまで俺を案内していた彼女。
「伏見和佑の監視を提案したのは比巻 牧瀬ちゃん自身でしょう~?」
「くっ、確かにそうですが……」
「それなら、もう反対側にはクリスを座らせましょう~、それでいいでしょう?」
「……分かりました」
「累ぇ、代わってあげてください~」
「了解でっす!」
そう言って席を立ちあがったのは、金髪ショートで一見男子に見間違えそうになる人物。
だが、暴力的なおっぱいはその判断を許さない。
クリスは累と席を交換した。俺もそれと同時に席に着く。
「……退院おめでと」
小声でクリスが退院を祝ってくれる。
俺が地獄のリハビリをしていた時も、なんだかんだで一番見舞いに来てくれたのは未悠さんを除いたらクリスだ。
面倒見がいいのも彼女の魅力なのかもしれない。
だが、喧嘩したときにちゃんと仲直りしていないのが少し、心に引っかかるが。
「さて、それでは会議を始めたいと思いますぅ~」
こうして、樫原十二賢者会の会議が始まった。




