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第四話



「じゃ、入ってきてー」


 メグル先生に呼ばれ、教室の扉を開ける。

 教室に入ると、一斉に視線が集まった。物珍しそうに見る人や、値踏みをするかのような目の人、興味なしと一瞥する人。

 教卓の横に立つと、チョークを手渡される。黒板に名前を書いて、正面を向き直った。


「伏見和佑です。魔術に関しては素養無しですが、楽しく学校生活を送りたいです。よろしくお願いします」


 パラパラと、拍手。魔術の素養がないということを聞いた瞬間、興味を失う者もいた。争うに足りない人物だと評価されたのだろう。だが、個人的にはその方がありがたい。


「じゃ、伏見くんは……後ろのあの席ね。日葉さん、何か困っていることがあったら教えてあげてね」


 と、指された席の横に視線を向けた時、一瞬ドキっとした。その席には、あの日葉クリスが座っていたのだ。

 メグル先生の言葉に適当に相槌を打っている。見た感じ、相当不機嫌そうだ。どうやら朝の出来事でまだ怒りが収まっていないようだ。

 席に座り、鞄を置いて隣席の日葉クリスへ挨拶する。


「えっと、よろしく」

「……ふん」


 相当ご機嫌斜めのようだ。右肩を揉みながらそっぽをむき、赤いツインテールをぴこぴこと揺らしている。

 だが、これは青春のスタート。初めての友達作りだ。ここはかっこよく悩み相談を受けることで、友好を深められるはずだっ!


「朝の試合、見たよ」

「……あっそう」

「パートナーの方も色々勝手だよな」

「は?貴方にイリスの何が分かるっていうの?」 


 まずい、踏み込みすぎたか。未悠さんに友人の作り方は、『女子は同調、男子は下ネタ』という格言を教えられたので実践してみたが、逆効果じゃないか。ていうか、そもそも友人居ない人の言葉をまともに受け取る方が馬鹿だった。


「あーっと、早くパートナーが見つかるといいな」

「あのね!イリスよりも高レベルで相性の良いパートナーなんていないのよ!」

「そ、そうなのか……?」


 声のボリュームがだんだん上がってきた。これは着火してしまったかもしれない。


「そもそも、何よ科学って!そんな寂れた技術、学んでどうするってのよ!」

「ま、まぁ科学にも良いところはあるんじゃないか?」

「ないわよ!魔術こそが世界を形作るの!それなのにイリスは……あったまきた!」


 急に椅子から立ち上がった。なんだなんだ、イリスと喧嘩でもしに行く気なのか。


「やめとけクリス、争ってもいいことはないぞ」

「あんたこそさっきからなんなのよ!馬鹿にしてるわけ!?」

「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど」

「いいわ!まずはあなたからよ!表へ出なさい!『決闘』よ!」


 と、胸倉を掴まれて引きずられて外へ連れていかれる。





「…………は、はぁあああああああ!?」







 そして連れられてやってきたのは、教室棟グラウンド。

 教室棟の隣に隣接しており、第一グラウンドとして授業や部活、運動会などの本部が置かれることが多いらしい。

 そこへ連れられ、気づいたらクリスと向かい合っている。


「待て、これって一対一ってやつか……?」

「八つ当たりもかねて、この学院のルールを教えてあげるわ!」

「おい完全に八つ当たりって言ってるじゃねーか!」

「この学院には、WB以外にもGSPを賭ける個人戦が承認されてるの。審判である教員に試合理由と敗北、勝利条件を伝えてから行うのよ」

「待て待て、俺には戦う理由なんてないぞ!」

「まぁ~、伏見くんも経験のために一戦やっておくべきですよー」

「メグル先生ィ!」


 どうやら、メグル先生は遊び半分で試合を承認したらしい。こっちはまだまともな授業すら受けてないんだぞ。

 クラスメイトの歓声が大きくなり始めると、メグル先生が呪文を唱え始めた。足元には魔方陣が現れている。


「試合、承認。敗北条件、行動不能又は降参。日葉クリス対伏見和佑、試合を開始します!」


 メグル先生が腕を上げた瞬間、魔防障壁が半径15メートルほどの円形に張られる。バトルフィールドということか。

 試合開始からワンテンポだけおいて、クリスが動き出す。

 両手両足には焔を纏っている。さっきの試合と同じだろう。

 直線的に向かってくる。回避しつつ、隙を伺――――――


「燃えろ……一閃!」


 推定距離20メートル。

 瞬きが終わるころには、目の前にいた。

 およそ人類が到達しえない限界速度。

 赤い一閃が描かれる。

 描いた焔の拳は、俺の腹部を確実に抉ろうとしている。


「バーストッ!」


 危険を察した体は、左へと吹き飛ぶ。

 その原因は焔の拳ではなく、俺の靴。360度自由な方向に、噴射できる。

 子供だましみたいな靴だが、最高到達速度は時速180km。静止状態からでも一瞬でフルスピードまで噴射できる。

 それによって逸れた体は、焔の拳がみぞおちを捉えることを防ぎ、追撃を逃れるためにクリスから距離を取った。


「なんだあのスピード……魔術なのか?」

「なによあの動き……魔術なの!?」


 同じような感想を、ほぼ同時に呟く。

 それもそうだ。クリスにとっては全身科学装備の敵というのは初めてだろうし、俺も一対一に特化した魔術はあまり見慣れていない。


「次で決めるわ……燃えろ!」


 更に焔が強くなる。周囲の気温もグングン上がっているだろう。

 だが、大まかな魔術構式は把握した。


「吹き飛ばせ!『循環せし焔の番人(ウロボロス)』ッ!」


 クリスは一度肩を回し、両手を空に掲げる。

 その上には、その名の通り円環する焔の輪が出来上がっている。直径はざっと5メートルを超えるだろう。

 回転速度と比例し、肌をチリチリと焼くような熱さが増すのを感じる。

 そして、焔の輪を空中へ投げる。


「学内序列七位に喧嘩を売る意味を教えてあげるわ!」


 クリスが指をパチン、と鳴らす。

 その瞬間、輪は一気に燃え上がりながら垂直に伸び、周囲は炎で囲まれる。

 逃げ場はない、炎柱は徐々に縮小しながら迫ってくる。


「この魔術を破ったものはいないわ、丸焦げになるのね!」


 だが、打開策を見出した。賭けは五分五分、試合の勝率は、八割五分ほど。

 懐から、拳銃を取り出す。


「馬鹿ね、この焔は弾丸すらも焼き尽くすわ!私の元へは届きはしない!」


 習った通り、両手で構え、クリスの右肩を狙う。

 焔は目前、鼻先は焼けている。

 そして、炎柱が俺を飲み込む寸前、引き金を引いた。



もし作品を楽しんでいただけましたら、ブックマーク、評価、感想のほどよろしくお願いします。

モチベがめっちゃあがります。

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