第三十七話
「――ちょ、なんでアンタがいるのよ!」
「私は……お見舞いに来ただけ……友人として」
なんだ……騒がしいな。
何やら二人組が騒いでるようだ。いつも流れているジャズも、今は何故かクラシックへ変わっている。
そして、二人の人物の声は共に聞いたことがあるものだ。
「見舞いに来てくれたのか……クリスにイリス」
体を起こして挨拶をすると、いがみ合っていた二人もおとなしくなる。
「あっ……起きたのね」
「色々と……大変だった……そうで」
「なんだ、事情は聴いているのか?」
「あの事件の後、樫原十二賢者会に招集がかかって、事件について詳しく取り扱ったの」
「まだ……3割も解決してないけど……」
学院の方で、事件がどう処理されているのかは分からないが、多少は聞いているようだ。
やはり、事件の対応でさえも樫原十二賢者会に丸投げか。
OFでさえまだ掴めていない情報が多々ある、何も知らない学生じゃ解決には時間がかかるだろう。
だが……気がかりなのは、俺のことについてだ。
一体、どこまで知られたのか。未悠さんとの繋がりがあるのはバレただろうが、他についてはどうか。
「なぁ、その会議では――――」
「カズスケ! これを見なさい!」
質問をしようとすると、その前にクリスがなにかしらの紙袋を渡してきた。
中を見ると、フルーツやお菓子などが詰められている。有名な果物屋のものだ。
「わざわざ持ってきてくれたのか……ありがとな」
「べ、別にカズスケを気遣ったとかじゃないわ……でも、怪我が怪我だし」
そういって、俺の右腕をチラリと見るクリス。
腕が無くなっているのにもだいぶ慣れたが、やはり他人が見るとショックが大きいだろう。
「クリス……喧嘩したことで……負い目感じてる」
「ちょ、そんなわけ!……ないこともないけど」
今日のクリスはどうも大人しい。
クリスなりに、俺に気を使ってくれているということだろう。
全く、一周回って分かりやすい奴だな。
「それにしても……あの神貫未悠と……繋がりがあるなんて」
「まぁ、色々あってな……」
「――――そこは私も詳しく聞きたいところですぅ」
イリスからの質問を適当にはぐらかしたところで、別の人物から止められる。
このおっとり口調の人物は、明らかに出雲志麻さんだろう。
病室の扉が開き、志麻さんとその後ろから悠麻も現れる。
「イリスとクリスもご一緒だったんですねぇ」
「志麻先輩! お疲れ様です!」
「志麻さん……悠麻さんも……何用…で?」
「もちろん、事情聴取ですぅ。伏見和佑の容疑は晴れたと言っても、不可解な点が多すぎますぅ」
「そのためにも、全て話してもらう必要があります。事件を知る、伏見和佑に」
まだ、捜査の手は緩まなさそうだ。
出雲姉弟の言い分は正しい。この事件の早期解決を求めるなら、俺を洗いざらい喋らせるのが一番だ。
自白魔術を使用しなかったのは、未悠さんのおかげか。
「現在、我々が掴んでいる情報は
『1、結界事件を起こした犯人はIMROの人物だったこと。
2、IMROの犯人と伏見和佑は対立状態だったこと。
3、死体は丸々謎の人物に飲み込まれ、行方知らずなこと。
4、伏見和佑と神貫未悠につながりがあること。』
たったこれだけです」
淡々と事実が並べられる。
既にデスアスクがIMROの人物だったということは割れている。
だが、それ以外は謎しか残っていないということか。
「今回の事件で~、学院側の被害者数は搬送者59名、死者19名の大惨事になりましたぁ」
「それだというのに、一切の情報が掴めない。これ以上、足踏みもしていられません」
やはり、樫原十二賢者会だけでは無理がある。
樫原踝学院長は、頑なに公安や魔術協会、教師さえも動かさない。
「もちろん捜査には協力します。ですが、こちらにも事情があります。全てはまだ語れません」
「そういうわけにはいかないですぅ……悠麻」
「了解」
と、志麻さんが指示をすると間髪入れずに出雲悠麻が俺の腕を掴み、手錠をかける。
この重ったるさ、魔嫌石に近いものを使っているな……一種の魔術か。前と同じようなものだろう。
「ちょ、志麻先輩!?」
「強引なのは……好きじゃない……」
「私も好きではないのですがぁ、そうも言っていられません~。神貫未悠さんが戻ってくる前に自白させ――――」
「――――誰が戻ってくる前だって?」




