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第二十八話


 視界には、空間がうねる瞬間、一瞬だけ『綻び』を見つけていた。

 そして、村正がそれを叩き切る。

 パキンッ!という魔術が瓦解する時特有の音を発する。

 すると、螺旋状の空間は元に戻っていた。


「効きはしないぞ、お前の魔術の綻びは見えた」


 すべての魔術には、どこかに綻びがあるとされている。

 綻びの存在は未だ学会で議論されるレベルだったが、その存在を確信し、学術的に証明してみせたのが神貫未悠最大の魔術成果の一つと言っても過言ではない。


 そして、それを視認出来るようにし、更に綻びから切り開くところにまで発展させた。

 これこそが、和佑、そして村正が『最も危険な魔術殺し』と言われる所以である。


「やはり……村正は怪物だなぁ!」


 次は、和佑の天井。村正は届かない。

 天井を支えている支柱とボルトが紙切れのように潰れ、天井の石材は耐えられず崩壊した。


 すぐにバックステップで回避するが、追い打ち様に着地点を狙われる。

 加速器と体術、村正で避けながらデスアスクと距離を取る。

 廊下には丸いプレス機で凹まされたようになっていた。


 過去に戦ったときは何か見当もつかなかったデスアスクの魔術。

 構造を理解すれば簡単なものだった。単純に圧縮と伸長をするだけ。

 これらの魔術は本来なら空間自体に力の流れを作るだけのものだ。もちろん物質の弾性や質量に関係するので、力の大きさまでは指定できない。だから、戦闘方法も潰すか、引き延ばすかだけの二つしかない。


 なら、何が怖いか。

 それは、デスアスクが得意とするもう一つの魔術。結界魔術だ。自らの陣地を作成することで、結界内のすべてを奴の手中に出来る。

 そして、こいつが今回張り巡らせた結界は、魔素の自動吸収以外に、視界内にある『全ての魔素』を手中に収めることが出来る。


 この世の物質には、基本的に魔素が含まれている。モノを潰すのも、着火するのも、魔素が関係しているということは魔術学の基本とされている。


 故に、この空間では小さなスポンジをハンマーで叩こうと潰れない。

 そして、デスアスクの視界内に入れば、魔素、ひいては力の流れは自在に動かすことができる。


「この魔術はよぉ、色んな使い方があってだなぁ」


 そういって、巨体が大きな石材を一つ掴む。


「『伸長す(Dehnung)』」


 その瞬間、まるでパン生地が麺棒に伸ばされるかの如く、丸く大きな石材が薄く伸ばされていく。恐らく、普通に魔術で引きのばしてああはならない。魔素をデスアスクが操作しているからだろう。


 そして、それをデスアスクの魔術で強化された腕力で飛ばされる。

 空気抵抗はなくなり、速度は音速を優に超えている。


 だが、この石材も魔術でコーティングされているものだ。

 『綻び』はある。

 右手を前に、村正を右の腰に構える。

 そして、直撃する刹那。

 村正は、石材を真っ二つにする。

 魔術により引き延ばされた石材は、綻びから崩れ、原型を保てなくなる。

 粉々になった石材を浴びていると、近くから一過性の雷の音が聞こえてきた。


「今のは……起因が破壊されたか」


 どうやら、出雲姉弟がやってくれたようだ。まだ空は晴れないが、明らかに効力は弱まっている。


「ちと分が悪いな……」


 天井に更に穴を空け、上へ逃げていくデスアスク。

 起因から魔素を得ているとしたら、魔素の提供は大幅に減っているだろう。

 デスアスクの魔力量はそこまで多くないとルミハ部隊の時に聞いている、もう大技はそこまで打てない。

 だが、未だ結界が崩れないのが気がかりだ。

 とりあえず、今はアイツを追い詰めよう。


 すぐさま追いかけ、階段を上りきり、ドアを開けるとそこは屋上だった。


「まさか仲間がいたとはなぁ」


 丁度、俺が上ってきた階段室の上から声がする。


「デスアスク、年貢の納め――――――」

「それはどうだかな?」


 振り返り、階段室を見上げると、その巨体の腕には人が抱えられていた。

 紅いツインテール、つり目で好戦的な表情。そして、デスアスクのせいで更に小柄に見える身体。


「クリスっ!」

「うぅ……」


 まぎれもない、日葉クリスだ。

 ここは教室棟。誰がいてもおかしくないが、よりによってクリスを人質に取られるなんて。

 何はともかく、この状況は悪過ぎる。


「デスアスク……てめぇ……」

「まさかこんなところにいるとはなぁ!神は俺に味方してるようだ!」


 デスアスクがクリスを壁際に投げ飛ばすのと同時に、指を一度鳴らす。

 直後、クリスの右足がうねる。


「あああぁぁぁあ!」

「ク、クリス……ッ!」

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モチベがめっちゃあがります。

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