第二十五話
「久しぶりだ……久しぶりだなぁ『虚無の申し子』!」
「やはりお前か……デスアスク」
その巨体の人物の名は、マルクス・ブラッドライク・デスアスク。
IMROの汚れ役、人殺し専門の『刑戮者』を引き受ける魔術師。しかし、魔術師とは思えない剛腕や巨体は、魔術による強化を行いすぎたが故に戻らなくなったという。
奴とは昔、一度対峙したことがある。
「貴方……何者ですカ、早く結界を解除しなさいネ」
シェンメイがフラフラと立ち上がると同時に、攻撃のために構える。
「駄目だシェンメイ! こいつの視界に入るな!」
突き飛ばしたが、遅かった。
「なんだこいつ、うるせぇガキだ……な!」
デスアスクが右腕をシェンメイの方へ伸ばす。ただそれだけで、シェンメイの脇腹は削れるように潰れ、血を吐き出した。
急いで駆け寄るが、急いで治療しないと、危険だ。
「なにが――――起こって――――」
「くっ……『転移』!」
ポケットに仕舞われていた空間転移の結晶。
それをシェンメイに握らせ、発動させる。
結晶は、シェンメイの体を包むように発光し、そして小さくなる。血だらけのシェンメイを、OF事務所に転移させた。これで、救援も呼べるはずだ。
「ったく、逃がしたのか……まぁ、俺の狙いはお前だけだが」
「何をしに来た……ってのは愚問だな」
デスアスクはIMROの刑戮者。俺を狙うには十分すぎる理由だ。
「お前がIMROから機密資料を盗み出した時以来か?俺が目標を逃がしたのは、お前が初めてだ」
「IMROの番犬がわざわざお迎えとは、ありがたいことだっ!」
話しながら、予備動作をほぼ入れずに拳銃を取り出し撃ちこむ。
だが、9mmの弾丸はデスアスクに届く前にぺちゃんこになる。1/100秒以下で届くはずが、それに反応して見せた。
それに、デスアスクは指一本動かしていない。
「それは魔術破りの弾丸だな? 神貫製ってところか」
「流石に、この程度じゃない……な」
「すぐに終わらせないからよ、まずは足から潰してやる」
そう言われた瞬間、右足の空間が『うねった』。空間の歪曲が始まる寸前に、加速器で後退しロッカー裏に隠れる。
その直後、そのロッカーが雑巾のようにぺしゃんこになる。
「逃がさないぜ」
ここは倒れている生徒が多すぎる。下手に動けば、生徒に被害が及ぶ可能性は大いにある。
何処か広いところ、せめて校庭に移動しないと――――
「ほらほらどうしたぁ!?」
「くそっ」
また、間髪入れずに空間が『うねる』。
背後の出入り口が封鎖された。窓から逃げ出すような隙も無い。これは上に行くしかない……!
遮蔽物を利用しながら、急いで階段を駆け上る。
そして、二階にたどり着いた時、俺は目を疑った。
空よりも暗い紅色。
鼻孔を握り潰すかのような腐臭。
廊下は、ゴム製の灰色ではなくなっていた。
これが人の血だということを瞬時に理解できた。そして、一人二人だけではないことも。
「あぁ、そういえば汚したままだったな――――ん?」
先ほど一階の天井に空けた穴から登ってきたデスアスクが、何事もないように話す。
こいつが……やったのか。
ただ、それだけで俺の脳みそへの血液供給量が限界を超えた。
「ん? おかしいな、死体が残って――――なんだ虚無の申し子、やっとやる気を出したのか」
左手には村正が握られていた。
目は、紅く光っている。
デスアスクは、刀身を見て、ニッとこれまで以上に嘲って笑って見せた。
「いいぜぇ! 『圧縮す』!」
そう言って、再び胸元当たりに螺旋が生まれる。
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モチベがめっちゃあがります。




