第十八話
「生徒連続失踪事件……か、興味深い」
帰宅し、未悠さんに事件の詳細を伝えると吸っていた煙草を潰し、ソファに座る。
「状況証拠しかないので、事件と言い切れませんが……この頻度、そして手掛かりを残さないのが事件性を確立しています」
「確かに、これは事件と断定していいだろう。だが、それにしても情報が少なすぎる」
「学院内部、しかも一部でしか明かされていないので、捜査も出来ない状況なんでしょう」
「また樫原が圧力をかけているのか……分かった、こちらも捜査を進めてみよう。何かにつながるかもしれないしな」
「何かというと……」
「もちろん、防衛省ひいてはIMROも関わっているかもしれん」
そういうと、コーヒーを持ちながらパソコンの前に座り、資料をまとめ始める未悠さん。
確かに、俺が入学してから起こっている事件だ。偶然ということもあるだろうが、妙に引っかかる。あの狙撃の件もある。学院内に潜む『何か』を捜査しなければならない。
そんな時、事務所の呼び鈴が数か月ぶりくらいに鳴る。
「なんだ、もう夜だってのに」
「和佑出ろ。多分、あいつだ」
言われた通り、玄関に向かう。覗き穴から覗き込んでみると、真っ暗。
「……どちらさまで――――」
「ごちゃごちゃ言ってねぇで開けろッ!」
とドアが蹴飛ばされる。この好戦的な女の声は聞き覚えがあるぞ。
ドアをゆっくり開けると、そこに立っていたのは予想通りの人物だった。
「よぉ久しぶりだな坊ちゃん、元気してたか」
「げ、なんでお前が来てるんだよ……リック」
腰に拳銃、背中には布を被せて隠してあるがライフルを背負っている。耳にあけたピアス、赤黒い髪なども含めて平凡な日本人ではないことが分かる。
昔、数回だけ任務を同じにしたことがあるだけの彼女が、なぜ今日、わざわざここへ来たのだろうか。
リックは俺の疑問には答えずに、事務所の中へ入っていく。
「へぇー、まぁ寝床には困ってないんだな」
「当たり前だ、遠路はるばるよく来てくれたな」
「ミズ・カンヌキの願いとなっちゃ、断れねぇからな」
リックは、ソファに座り、手をこまねく。
「なんだよ」
「客なんだからもてなせよ、ビールでいいから」
「日本じゃ未成年は飲酒禁止なんだよ」
「んだよケチ」
コーヒーを用意し、適当なお菓子と一緒に持っていく。リックはコーヒーを少し啜り、「まじぃ」といって俺に差し出してきた。やりたい放題だな全く。
「それで、希代の天才殺し屋が日本に何しに来たんだ?」
「褒めてくれるな、ミズ・カンヌキから呼び出されたんだよ」
「未悠さんが?」
「そうだ、リックには見てもらいたいものがあってな」
そう言って、未悠さんが持ってきたのは例の弾丸だ。真ん中で裂けているが、まだ形は残っている。
「これは?」
「和佑を狙撃しようとした弾丸だ、この弾丸について分かることはないか?」
「ハッハッハ、日本で狙撃だなんて、カズスケもツイてないな!」
そう言いながらも、リックは弾丸をマジマジとみている。確かに、弾丸を調べるにおいてコイツは適任だ。
リック・イーグル。裏の業界を怯えあがらせるほどの脅威のガンマンであり、最恐の殺し屋とまで言われている彼女は、銃火器についての知識がとてつもなく広い。様々な取引の情報も入手しているので、まともに流通していない武器でもわかるかもしれない。
30秒ほど眺めていると、リックが俺の肩をたたく。
「なんだ?」
「この弾丸、魔力が込められていたんだな?」
「あぁ、村正で叩き切った時に、魔力を感じた」
「そうか……ふむふむ」
「何かわかったのか?」
「そうだな、これっぽい銃が取引されてたとか言ってたような……記憶が定かじゃねぇなぁ」
うーんうーんと唸りながら、頭を捻るリック。やはり馬鹿だと、モノの忘れも早いのだろうか。
「おいカズスケ、お前なんか失礼なこと考えなかったか」
「なんでもないなんでもない」
「たっくしょうがねぇ、脳に血が足りてねぇんだ」
というと、リックはリボルバーと弾丸一発を俺に渡してきた。
これはまさか……
「カズスケ、好きに入れて回せ」
「なんちゅうことしようとしてんだ、バカじゃないのか!?」
「いいからやれよ、思い出せそうなんだ」
「いいじゃないか和佑、これがリックのいいところだ」
未悠さんもそういう始末。確かに、ぶっとんでいるのがリックだが。
渋々、弾丸を込めて、リボルバーを回す。リックはまだ頭を捻らせている。
「ほらよ」
「よし、行くぞ」
リックの呼吸が明らかに早くなる。興奮しているのか、心拍数も上がっているだろう。そして、もちろん俺の心拍数もどんどん上がっていっている。未悠さんだけが、普通にコーヒーを飲んでいる。
「いくぜ―――――――」
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モチベがめっちゃあがります。




