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第二話



 昨晩、入学が決定した学校の制服やバッグ、生徒手帳まで届いた。制服や靴のサイズはピッタリ、更にはいつ撮ったか記憶にない写真が生徒手帳に登録されていた。

 だが、その疑問も学校名を聞いて少し納得してしまった。


 その名は私立樫原(かたぎはら)学院。五人しかなれないIMRO常任理事であり、日本の魔術学問のレベルを世界レベルに成長させたパイオニアである樫原踝(かたぎはらくるぶし)が設立した魔術学院。

 今や、日本でも必修科目となっている魔術だが、その魔術学を極めるために作られた学院である。その学院は、専門レベルの魔術や、魔術師になるための設備などがすべて整っており、世界中の魔術師の卵がこの学院を受験する。


 なぜそんな学院に魔術の素養がない俺が転入できたのかというと、言わずもがな未悠さんだ。未悠さんは、昔から腐れ縁で樫原学長と付き合いがあるらしい。

 そして、俺はいま、その学院の前にまで来ているのだ。


「……嘘だろ震えが止まらん」

「お前は予防接種前の犬か。……何度も死地を切り抜けてきた伏見和佑がこの様とはな」

「うるさいな、俺だって学校は初めてなんで緊張するんですよ」

「さっさと学長室へ行け。とてつもなく苦手なタイプの人間が待ってるはずだ」


 いつまでも震えているわけにもいかないので、未悠さんに別れを告げて、学院内へと踏み出す。

 この学院がある西逆(さいぎゃく)市は、樫原学院により発展した魔術都市でもちろん樫原学院の面積は街の半分以上を占める。そのため、校門から学長室のある本校舎までも相当な距離がある。

 始業まで三十分もあるので、それまでには学長室には辿り着けるはずだ。

 



 そんな甘い考えを持っていた時が私にもありました。

 十分で迷ってしまい、マップを見ようにも学内デバイスは『登録がされていません』の一点張りで使えず、森を一つ越えたあたりでやっと一つの建物にたどり着く。ここなら人もいるだろう。


「やれやれー!」「あのコンビの試合だって!?」


 建物の裏から、大きな歓声と剣戟音が聞こえてくる。どうやら試合か何かをやっているようだ。

 試合現場に向かうと、テニスコート二つ分ほどの広さに二人ずつが向き合って試合を行っている。どちらのペアも、攻撃一人支援一人という形を取っているようだ。

 周囲には驚くほどの人数が集まっていた。


「なぁ、なんでこんなに人が集まっているんだ?」


 近くの生徒に話を聞いてみる。


「知らないの?この試合に行っているのは超強豪ペア同士なのよ」

「超強豪?」

「そうだぜ、特に焔を使っている日葉(ひのは)クリス、ぬいぐるみを抱えてるイリスちゃんの方なんかは飛びぬけて強い」

「学内序列六位のイリスちゃんと七位のクリス様、このペアを超えられるペアは学院でも数ペアしかいないんだぞ!」


 隣の男達も嬉しそうに語っている。制服の胸のあたりに『クリスイリス愛好会』というバッジをつけているのが見えたので、お察しだろう。


 学内序列六位と七位ということはTOP10ということだが、確かに見てみるとその強さが分かる。

 前衛のクリスは焔魔術を主に使っており、ありとあらゆる攻撃方法を持っている。焔を腕と足に纏っており、一撃が致命傷になる。一瞬でも隙が生まれれば、多方向から一斉に焔魔弾を放ち、確実に耐久力を無くしている。後方から回復や魔術防壁を張ろうとしても、後衛のイリスの妨害魔術によってことごとくキャンセルさせられている。相手も健闘しているが、単純な総合値もクリスに負け、支援も全て受けられない以上、ジリ貧であろう。


「これでお終いよっ! ――――一閃‼」


 相手が完全に態勢を崩した瞬間、周囲の気温が跳ね上がる。クリスのツインテールの先端に焔が見え始め、クリスの足元は焼け焦げている。



 瞬間、まさに赤の一閃。黒煙が舞い上がり、会場を包む。

 


 黒煙がまだ晴れる前に、中から試合相手を抱えたクリスが現れた。


「ま、悪くはなかったわ。私たちが強すぎただけよ」


 そういって試合相手を、急いでやってきた担架に乗せる。運ばれていく相手の制服は、真っ黒になっていた。

 そして、周囲の歓声が大きくなる。その声に包まれながら、クリスは右肩を回しながらイリスの元へ向かう。


「今日も良い支援だったわ、流石はアッヘンバッハ家の令嬢ね」

「クリスも良い働き……もっと試合をやりたかった」

「……え?」


 なんだなんだ、急激に雲行きが怪しくなってきたぞ。

 周囲の歓声もどこへやら、みんな固唾を飲んでイリスの言葉を待っている。


「――――――パートナーを解消する」

「……は、はぁ!?なんでよ!?」

「前から……科学を研究したいって言った……そろそろ魔術も潮時かなって」

「ちょ、身勝手にも程があるでしょ!」

「そもそも……私はやらないといったのに無理やりパートナー申請したのは……クリスでしょ」

「うぐっ……じゃあ私はどうするのよ!」

「クリスみたいな赤髪ツインテでロリ体型なら……パートナーもすぐ見つかる」

「アンタだってチビじゃ――そういう話じゃなくてっ!……あぁもういいわよ!アンタなんか知らない!」

「そうしてくれると……ありがたい」


 どうやら、イリスはやりたいことの為にパートナーを解消するというようだ。これはショックだろう。周囲の愛好会もショックで言葉を失っている。

 この学院で俺はやっていけるだろうか……


 

「やっていけますとも、あの伏見和佑だろう?」

「……っ!」


 一瞬で背筋が凍り付いた。

 後ろから聞こえてくる、重く冷たい声。そして、存在を感じさせなかった人間。

 恐る恐る振り向くと、そこにはゆがんだ笑顔をした男がいた。


「クリスとイリスのペアは解散ですか、残念ですねぇ」

「貴方は……?」

「んふ~、私を見て、ひとつ名前を考えてみましょう」


 そう言って、全身の服を晒すように一回転する男。その中世西洋風な装いと深めに被ったシルクハット、そしてニコニコしながら上をクルクルしている。この異質感は、経験したことがある。


「……樫原踝学院長」

「大正解ですとも!私こそが、私立樫原学院の設立者であり学院長、樫原踝ですよ!」


 なるほど……俺が苦手なタイプだ。


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モチベがめっちゃあがります。

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