正体
それから数日が経ったある日。愛澤は再び板利明の店に来た。やはり常連客の宮本栞がいた。愛澤は彼女に話した。
「宮本さん。いいえ。はじめまして。ウリエル」
宮本は振り返る。
「どこで分かった」
愛澤は椅子に座り推理を話す。
「電話でのあなたの言動を推理で繋ぎ合せたらあなたという結論に到りました。上司の裏切り。部下が責任を取らされた。そして上司は部下の失敗を死んでも償うべきだという考え。これだけのピースではまだ分かりませんでした。そこであなたについて調べました。そしてあなたの母親は七年と半年前に投身自殺したという事実が分かりました。その女性の名は桜井真。私の幼馴染だった女です」
宮本は拍手をする。
「そう。大工が辞任した時は責任を取ったと思った。あいつは遺族に慰謝料も払わなかった。そして思った。上司は部下の失敗を死んでも償うべきだと」
「大工への復讐か。それは僕も同じです。気が合いそうな人と出会ってしまいました」
「では大工に復讐する機会があったら協力するよ」
彼女の表情は明るかった。しかし愛澤には分かった。その表情の裏にある真実が。
彼女は少し間を置き話した。
「それでこれからどうしますか」
「ゼラキエルの行方を追います」
ゼラキエルというコードネームを聞き宮本は驚く。
「板利明の上司ですか。妙だと思っていました。部下のピンチだと言うのに現れないことが」
「彼を探し出してあることを交渉するつもりです」
宮本は聞き返す。
「あることですか」
「二カ月後の会議で詳しく話します。楽しみにしてください」
愛澤は店を後にする。そして彼は旅に出かける。組織を再構成するために行先は告げず。




