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隠蔽  作者: 山本正純
終章
44/48

裁判

 その翌日。鈴木光子の初審が行われた。光子は法廷でも罪を詫びた。裁判は淡々と進んだ。裁判長が罪状を読み上げる。

「被告人を懲役七年に・・」

 その時鈴木光子は手を挙げて裁判長の話を中断した。

「皆さんに聞いてほしいことがあります。裁判の判決が左右する大切なことです。三年前に発生したショピングモール無差別殺傷事件の真犯人は渋谷可憐です。彼は林さんを殺していません。その彼女は自殺をしました。しかし私は彼女が誰かに殺害されたと思っています。警察の皆さん。この事件だけは隠蔽しないでください。あなたたちがこの事件を隠蔽したならば出所後再び通り魔事件を起こします。新たなる犠牲者を出さないためにもどうか再捜査をしてください」

 彼女のスピーチに法曹界とマスコミは驚愕した。犯行声明とも取れるスピーチ。このスピーチによって神奈川県警の今後の捜査に世論が注目を集めた。


 喜田はワイドショウでこのことを知る。その時喜田の携帯が鳴った。

「あなたたちも大変な大事件の捜査をしてしましたね。神奈川県警本部長さん」

『そっちの赤い落書き殺人事件の方が楽だっただろう。あのスピーチでこの事件が世間の注目の的となったよ。近いうちに再捜査を始めないと世間が警察不信となる。再捜査をすると隠蔽した事件が浮き彫りとなり警察不信となる。何かいい考えはありませんか。これでは行動しても結果は変わりません』

「再捜査をすることをおすすめします。そうすれば信頼が回復するでしょう。それに被告人の言っていることが正しいとは限りませんからね」


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