追跡 後編
不審者は女を恐喝する。愛澤は不審者に近づいた。そして不審者の右腕を掴む。
「観念した方がいいですよ。不審者さん」
不審者は驚く。
「警察か」
「いいえ。違います。ただの勇敢な週刊誌記者ですよ。あなたも武器を持っていないと思います。なぜなら逃走劇の最中に落ちましたから。あなたのナイフが」
不審者は慌ててポケットの中にあるはずのナイフを探す。
「最後の一本が落ちた。計画が丸つぶれだ」
愛澤は不敵な笑みを浮かべる。
「もう少し経てば警察がここに来ます。もう終わりにしませんか。不審者さん。いいえ。神奈川県連続通り魔事件の犯人さん」
その頃現場検証をしていた狩野警部補がナイフを回収した。
「このナイフ。間違いない。通り魔のナイフだ。このナイフを落とした男を見た人はいますか」
マスコミ関係者の一人が答えた。
「目撃者はここにいる人全員だ。その男はホスト風の男で煙草を吸っていた」
別の新聞記者が続けた。
「その電柱の前で被害者の自宅を見つめていましたよ。その不審者を一人の週刊誌記者が追いかけていきました」
狩野たちは急いで不審者の後を追った。
「まだ終わらない」
不審者は商店街の出口まで走る。その先には黒いワンボックスカーが駐車されていた。そしてドアが開き不審者は車に乗り込んだ。
発進した車を見て深追いは諦めた。カーチェイスは苦手だからだ。少し遅れて警察が到着した。




