論争 後編
愛澤は激しく対立する。
「完全に容疑者から外れたということではありません。あのアリバイが崩れた場合はどうしますか」
「捨て駒ですね。上司の口封じでしょう」
「その上司を殺せば組織が崩壊します。だからこのゲームを始めたのではないのですか」
「確かにそうだが、そうなった場合は圧力をかければいいだけの話」
通り雨は激しく降る。雨水で乾いた正義を潤すように。
「また隠蔽ですか。我々の組織は隠蔽を許さない組織ではないのですか。その我々が隠蔽してどうするのですか」
「あのお方の決めたことです。これがあのお方の出した結論です」
「分かりました。捜査を続けます。あの日陰隠蔽を許さないと決めましたから」
この論争は私の負けだ。喜田はこう思った。そして喜田は提案をする。
「そこまで言うなら延長戦でもしますか。あのお方にとって有益な結論を出した方が勝ちというルールでどうでしょう」
愛澤は聞き返す。
「対戦相手は誰でしょう」
「ウリエル」
予想通りの答えに愛澤は驚かない。
「相手にとって不足なしです。では私が勝ったら一つだけ命令します。これでどうでしょう。」
「分かった。ではゲームスタート。と言いたいところだが、ウリエルの許可を受ける必要がある。勝手にプレイヤーに任命したのだから」




