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隠蔽  作者: 山本正純
第二章
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名簿 前編

 十三時。植田時計店。愛澤は玄関のドアを開けた。すると小太りの店長が話した。

「珍しいね。君が変装もせずに来店とは」

 愛澤は指を立てる。

「短刀直入に聞きます。この店で販売した盗聴器付きの時計が、ある事件に利用されました。そのことが警察にバレると刑務所行きは確実です」

 植田は怒る。

「告発するつもりか。お前だってこの店にはお世話になっただろう」

 怒りに対して愛澤は笑う。

「基本的に組織の上層部の人間が逮捕されることはありません。なぜならその前に暗殺されますから。しかしあなたは違います。あなたは捨て駒ですから。同じような協力者は星の数ほどいます。あなたが逮捕されようが、ここで自殺しようが我々には関係ないです」

 植田は怒りを鎮めた。

「それで何をすれば言い」

「交換条件です。あなたは簡単な質問に答えてもらいます。答えたら告発はしません」

「いいだろう」

 愛澤は質問をする。

「佐久間翔をご存じですか」

「盗聴器付きの時計を購入した男だ。この購入者名簿に書いてある」

 購入者名簿には佐久間の名前があった。

「購入したのは発売前日ですか」

「珍しいフライングゲットってやつで・・」

 植田はあることを思い出した。


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