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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編後半

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第91話 「たこぉ~……」(メンダコ語で残念の意味)

 普段の3倍の長さになり盛大に遅刻。すみませぬ。

 唇に残る確かな感触が今さっきの出来事が夢でなかったことを物語っている。

 思い違いでなければ江里さんの舌が僕の唇に触れたような……。

 けど江里さんは何もなかったかのように少し経ってからふっと離れていった。


「……ん。生キャラメル……作ってきた」

「…………ハイ」


 そう言う江里さんの表情は普段通りで何も変わったところは無い。

 もしかして僕は白昼夢を見ていたんだろうか? そう思ってしまうほどに非現実的な一瞬だった。

 差し出された生キャラメルはひんやりとしていて、火照っている今の僕にはありがたい。


「オブラート……そのまま食べれる。フィルムにすると……柔らかいから……はがすの大変」


 薄いオブラートに包まれたそれを口に運び、モグモグしている江里さん。


 オブラートはこれに使ったから持ってたのか……って、待って!?

 さっきのなに!? 舐めたよね!? 江里さん間違いなく僕の唇……舐めたよね!?


 ひとまず渡された生キャラメルを口に運んで、舌でコロコロと転がしてから落ち着く。

 仄かにハチミツのような甘みを感じるどこか優しい風味で、舐めているだけで自然と心が静まっていった。


「……えりさん、僕の口に……何か付いてました?」

「…… (マヨネーズ)


 澄んだ思考から導き出された当たり前の問いを投げてみたら、顔を逸らして電波塔(ツリー)に目を向けた江里さんが小声でぼそりと零した。

 横顔だから正確には分からないけど、心なしか頬に薄紅が走っていくのが見えた。


「……舐めた?」


 やめとけばいいのに。

 聞かなければいいのに。

 ……そう理解していたのに。


 やっぱり気になって。

 江里さんの口から真相を聞きたくて。

 ある種の確信を得たくて。


 僕は問い続けた。


「………………………… (なめたぁ)……」


 僕、硬直。


 右手の甲を口に押し当ててこちらを振り向いた江里さんからの返答。

 頬には紛れも無い深紅が咲き誇り、僕の視線から逃れるように下げられた瞳には薄い涙の膜が張っているように見える。


 ……破壊力は抜群だった。


 本当は「なんで、舐めたんですか?」とか聞きたかったけど、追撃を許さない鉄壁の守りに僕は口をつぐんだ。


 さっきまで優しく感じていたキャラメルの甘さが鋭さを増したように感じたのは、きっと僕の気のせいだろう……。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 それから集合時間まで映像が360°全体に映し出される球体状のシアターで宇宙と星の誕生を見たり、ミュージアムショップでお土産を買ったりしていた。

 なんと宇宙食が売っていたので僕は両親にタコ焼きとバニラアイスを。

 江里さんはイチゴアイスとスペースカレー(レトルト)を買っていた。

 それとふたりで魚の形をしたカラビナが付いた色違いのメンダコハンドタオルを買って、交換した。

 僕は江里さんにオレンジのメンダコを。

 江里さんは僕にブルーのダンボオクトパスを。


「……めんだこ……かわいぃ」


 早速袋から出してカラビナの部分を掴んで、みょんみょんと上下に動かしながら江里さんが遊んでいた。


 そこまで喜んでもらえると嬉しいです。


 放置していたらいつまでもみょんみょんと遊んでいそうだったので、江里さんの手を引っ張ってミュージアムショップ脇の出口から外へ。


 ……お、おっきい! これが海にいるなんて……ワクワクする!


 外に出たら真正面にシロナガスクジラの実物大の模型が。

 長さなんと30m。

 あまりの大きさにピンと来ないかもしれないけど、マンションだと10階くらいの高さになると説明文に書いてあった。……巨大すぎる。


 僕が立ち止まってそのあまりの大きさに圧倒されていたら、江里さんもメンダコみょんみょんを止めて「……クジラの滑り台!? ……滑れる!?」瞳をキラキラと煌かせて、催促するように僕の手を「ん~っ!」と引っ張ってきた。


 ……いや確かに滑り台にも見えなくもないポーズだけど、あの高さから滑ったら摩擦熱でお尻を火傷しますよ?


「……滑れません」

「……ざんねん」


 しょんぼりと肩を落とした江里さんは何を思ったのかメンダコハンドタオルを自分の頭にのせて、「たこぉ~……」と言っていた。


 ……これ笑っていいやつなのかな?


 どうすればいいのかひとりで真剣に考えていたら……背後から声を掛けられた。


「……あれまぁ~!」

「またお会いしましたねぇ~」

「ほほぅ……こりゃえらいどでかい鯨だのぉ!」

「こんなところにも……かわいいめんだこさんがおるのぉ~。ふぉっほっほ」


 見ればフーコーの振り子展示のところにいたおじいちゃんおばあちゃんの団体様だった。


「なんじゃ……ふたりでそんなとこ突っ立って? ……そうじゃ! 写真撮ってやろか?」

「……え?」

「これでもわしゃあ、すまほゆーざーなんでのぉ。ほれ、すまほ貸してみ?」


 オシャレなハンチングを被ったひとりのおじいちゃんが僕らにそんな提案をしてくれた。


 ……そう言えば夢中になりすぎて写真を全然撮っていなかった。そもそも僕にはまだ写真を撮る習慣がないっていうこともあるんだけど。


「……お願いします!」


 ちなみに江里さんはメンダコハンドタオルを頭にのせたまま、僕の腕に抱き着いて隠れるようにおじいちゃんを見ていた。……うん。本当にかわいいメンダコさんだ。

 おじいちゃんに指示された位置に行って、初めは普通に立って写っていたんだけど「これじゃあ、つまらんのぉ~」と言われ、新たに指定されたポーズに……っておじいちゃぁぁぁぁぁん!?


「……あれまぁ~」

「私らにもあんな頃あったわねぇ~」

「半世紀も前だから覚えとらんのぉ~」

「ほれ、めんだこちゃんもうちょっとくっつかにゃ! ……顔こっちむけて」

「……ん!」


 ……意味が分からない。

 おじいちゃんが指示したポーズは江里さんが真横を向いて僕に抱き着くというものだった。

 江里さんも江里さんで急に積極的になっている。

 その後は今度僕が同じように江里さんに抱き着かされた。……死ぬほど恥ずかしかった。

 ……しかもそのタイミングでクラスメイト達も出口から姿を現して、ニヤニヤした半田くんも僕らのことを自身のスマホで撮っていたのを僕はしっかりと見た。……半田くん許すまじ!


「おふたりさん……お幸せになぁ~」

「あ、ありがとうございました」

「……ありがとう……ございましたっ!」


 写真を撮ってくれたおじいちゃんにふたりでお礼を言って団体様と別れた後に、今度は別の団体さんに声を掛けられた。……言うまでもなく半田くん率いるクラスメイト達のグループだった。


「あぁぁぁぁぁ!」

「俺らはむさくるしい男グループだというのに!」

「くそぉ……早く付き合えよ!」

「いや……むしろ付き合ってくれ!」

「だがな……相田だけ末永く爆発しろ!」

「堪えられんから……むしろ今すぐに爆発してくれ!」

「おい、僻むな……どうだったおふたりさん。楽しめたか?」


 学生服じゃなくて何故かパンダが描かれたTシャツを着た半田くん。……ミュージアムショップで売ってたやつだ。


「……はい。深海展のトガリコンニャクイワシの名前が……一番印象に残りました!」

「……あと……ウルトラブンブクもっ!」


 やっぱり僕の腕に抱き着いて隠れている江里さんが、よっぽど主張したかったのか珍しく皆の前で喋っていた。


「ウルトラブンブク?」

「そんなへんちくりんな名前のやついたんですね!?」

「江里様が仰られるなら、たとえこの世にいなくとも存在を証明して見せましょうぞ!」

「そうか……よかったな。あー、それでなんだが俺らも写メを撮りたいから……頼んでもいいか?」

「……はい!」


 ――僕は半田くんに仕返しをするために変なポーズを指示しようと、進んで撮影役を引き受けたのだった。

~レビューへのお礼~

 ( ;∀;)あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!(お盆休みが終わり今日から出勤のしきはら)

 学生の頃の夏休みに戻りたい(社会人の方なら切実に分かってくれると思う)


 ……休みが短くても、唯一の救いは皆さんがレビューをバシバシ書いて下さることです!

 しきはら、よしの、ここまで頑張れているのは皆様のおかげです<m(__)m>

  黒様、24件目のレビューありがとうございます!

>口から甘くて赤いの出て来たよぉ... ←イチゴジャムなら問題ないですね! もっと吐いて下さい!(ゲス顔


「……ん? ……く、黒くん……眠ってるの?」(口からイチゴジャムを吐き出して床にうつ伏せに倒れている黒様を見つけた江里さん)

「……アリさん……きたっ! ……かむ?」(アリにたかられている黒様を見て、何故か興味津々な江里さん)

「ンゴォォォォォッ!?」(そしてアリに噛まれる黒様)(ごめんなさい)

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