第88話 番外編 相田美羽 ぱぱぁーっ!
またしても予告なしで唐突に番外編をぶっこんでいくスタイル。
第77話に続き、第88話ということで今回は本当に完全な番外編になります。
番外編ですけど、普通にこの物語の未来のお話しになります。とある家族のとある1日です。
「……ただいま」
「……ん !? ぱぱっ!? ……ぱぱぁーっ!」
仕事を終え玄関の戸を開けて帰宅を告げたら、廊下の先から我が家の天使の声が聞こえてきた。
おまけにパタパタパタッと軽い足音も近づいてくる。
それだけで今日1日の疲れは吹き飛んでいった。
玄関の段差に腰かけて靴を脱いでいたら、足音はいつの間にやらすぐそばまでやってきていて……、
「ぱぱぁーっ! ……おかえぃなさぁい!」
そんな舌足らずな幼児特有のかわいい声が背後から聞こえてきた。
靴を脱ぐことなんてどうでもよくなってしまい、すぐに振り向いて「ただいま」と返してから、娘の頭をわしゃわしゃと撫でる。
ママに似たのか艶のある黒髪は撫で心地抜群で、いつまでもわしゃわしゃしていられる自信がある。
……ただママのようなロングヘアーは「あっちゅいっ!」とお気に召さなかったので、真夏の今の時期にぴったりな、くりっとしたボブヘアーについ先日カットしたところだ。
娘もかなり気に入っているようで、頻りに「ぱぱもいっしょ……しよっ?」とプレッシャーを掛けてくる……パパがやったら完全に変態扱いされちゃうよ?
「……ちゃんと、おかえり言えて、美羽は良い子だなぁ~」
「……ん ~っ⤴! ……みう、いーこいーこ?」
撫でられてご満悦。
褒められてご機嫌。
目を細めて撫でられている感触に集中していた美羽が尋ねるようにこてんと小首を傾げている。
この辺りは本当にママそっくりである。
さすが親子。
ちなみに僕に似たところは……、
「……良い子良い子」脇腹ツンツン
「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? ……ぱぱぁーっ! くしゅぐったいの! めっ!」
猫っぽい叫び声をあげるところくらいだろうか?
美羽は僕の人差し指を小さな五指で掴んで、自分の近くから遠ざけようと一生懸命にこちら側に押し返そうと頑張っていた。
……はぁ~癒される。
「……ごめんなさい」
「……よく、で、き、まひぃたっ!」
素直に謝ると必ず許してくれる美羽。……本当に天使なのかもしれない。
それと「で」と「き」は注意して言ったのに、結局「まひぃたっ!」になっているところも……癒し力が高い。
「……身に余る光栄です」
「……ん ? ……だっこぉ~っ!」
「……はい、よろこんで!」
美羽が僕の方へ飛び込んできたので受け止めたら、かわいらしく甘えられてしまった。
もうね、はい、よろこんで! 以外の返事なんてこの世に存在しない。
美羽を抱き抱えたまま何とかして靴を脱ぎ、一緒にリビングへと向かっていった。
その途中、普段ならばママも迎えに来てくれるのだが、今日は姿が見えなかったので美羽に尋ねてみたら、
「あっちっちしてるっ!」
何となく想像がつきそうな返答が返ってきた。
晩ご飯の支度中なのかな?
そう考えながらリビングへと繋がるドアを開けたら……漂ってきたのは食欲を刺激する香ばしい唐揚げの匂いだった。思わずゴクリと音が鳴るくらい口内にあふれてきた涎を飲み込んだ。
「からーげーっ!」
「……ただいま」
「……ん。ちょっぴり……待って? 今、手が離せないの……」
真剣な表情で油の中を泳ぐ鶏肉を監視している美奈。
……そういえば初めて家にお邪魔して美奈が料理をしていた時もこんな感じで集中していたなぁ。
「……食器……準備しておこうか?」
「……ん」
「……よ~し、美羽お手伝いしてくれるかな?」
「はいっ! よろこんれーっ!」
言えてはいないけど早速「はい、よろこんで!」を覚えた美羽が短い手を目一杯ピンと突き上げて、元気良く返事をしてくれた。
そんな天使と一緒に仲良く食器並べを行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……唐揚げ……ちゃんと美味しくできてた?」
美羽を寝かしつけに行っていた美奈が帰ってきて開口一番にそんなことを口にした。
「……いつも通り、最高に美味しかったけど?」
「……んっ! ありがとっ。……美羽にあわせて少し薄めの味付けにしたから……心配だったの」
そう言って普段ならば向かいの席に座るはずなのに今日は…………何故か僕の方を向いて膝の上に座ってきた美奈。
「……確かに言われてみれば……薄かったような気もするけど……美奈の料理は学生時代からずっと美味しいよ?」
「……ん゛~~~っ!」
「……はいはい」
美羽がいると僕に甘えるのが恥ずかしいのか。美奈はふたりきりになると学生時代よりも遥かに甘えてくるようになった。いつも我慢している反動なのか完全に甘えん坊である……。多分高校時代の僕だったら間違いなく鼻血を拭きだして死んでいただろう。
頭を撫でて! と言わんばかりの勢いで頭をぐりぐりと僕のおでこに押し付けてきたので、ご要望通り優しく撫でた。
「……おふろ……はいろ?」
しばらくの間撫でていたら、少し眠そうな瞳をした美奈が眠気を堪えるように言った。
もう結構遅い時間だし、早く入っておかないと美奈が寝落ちしてしまうか……。
「……はい、よろこんで」
美奈は昔から夜更かしが得意ではない。
“特別なことがない限り”22時過ぎには夢の中にいる。
それに最近は美羽を寝かしつけにいって、大抵はそのまま眠ってしまう。
現在時刻は22時ちょっと前。美奈にしては今日はやけに夜更かしをしている方だけど……もしかすると――んぐッ!?
「……んっ…………あっ………………んむぅっ♡ …………ふたりめも……?」
「……………………はい、よろこんで!」
――僕から離れた美奈の唇は丁度月明かりが当たって、唾液で妖しく艶めいていた。
……あっ、これ僕今日……寝かさせてもらえないやつだ。
~レビューへのお礼~
うわっほぉぉぉぉぉぉぉぉい!(飛び跳ねるしきはら
明日からお盆休みですよぉ!
レビューも22件ですよぉ!
あぁぁぁぁぁぁぁ最ッッッッッッ高に今幸せ!(しきはら秘蔵コレクションの獺祭を飲みながら
なので不意打ちで22時に投稿しました!(ハイテンション
黒鵺它様、レビューありがとうございます!
>最近の世の中で心が痛みきってしまったあなた! ←しきはらは日本酒で癒される系人間です(笑
すみません気持ち良く酔っぱらってますのでご容赦ください!(土下座
「……く、黒鵺它くんっ! ……大変! 口から血が……出てる…………大丈夫? ……ん? お砂糖が、欲しいの?」(水あめをネリネリして、黒鵺它様の口を塞いで止血しようとする江里さん)
「……パクパクパクッ!!」(そして窒息する黒鵺它様)





