第62話 私の20年前にそっくり!(自称)
「 …… …… …… 」
僕がボーっと固まっていたら江里さんが耳元で囁いた。
その小悪魔のような甘い声音が全身に駆け巡り、僕の意識は急速に覚醒していった。
……もうこれが反則なんですけど? むしろ吐息をかけられるよりも、ドキドキするんですけどぉぉぉ!?
「あっ! 歩きます! 全然歩きますから!」
「……んっ♪」
見れば信号は丁度青だったので、隣に立つ江里さんの手を僕から握って歩き始めた。
僕の家を見に来るのならちゃんとエスコートしなきゃ。
そう考えて僕は江里さんを先導しながら家路をたどっていった。
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ありふれた何の変哲のない2階建ての一軒家……それが我が家だ。
ちなみに江里さんの家と大きさは一緒くらいだと思う。外観しか見たことないから多分だけど。
「……ここが……そーくんのおうち……!」
「はい」
玄関の前に立って空を仰ぎ見るように顔を上に向けている江里さん。
ほどなくして今度は表札を見て「……相田って書いてある! そーくん家だーっ!」と当たり前なことを言ってから、相田君孝と彫られている部分をどこか楽しそうに指でなぞっていた。
まぁ、江里さん本人が楽しそうにしているのならば僕はそれでいいやと、指の先を眺めていたら……、
「……いきますっ!」ピンポーン♪
覚悟を決めたような言葉とともに、横にズレていった指がインターホンのボタンをぐっと押し込んだ。
えぇぇぇ!? 江里さん何してるんですか!?
うちに来たって何も面白いものなんてないですよ!?
少し経ってインターホンのスピーカーから母親の、のんきな声が聞こえてきた。
『はいは~い』
『……こ、こん――』
『――どちらさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?』
ちょっ! 母さん!? 何してんの!?
インターホンはカメラ付きなので室内でモニターを見た母さんは、いきなり我が家に女神様が訪ねてきた! とでも思って驚いたのかもしれない。……冗談だけど。
江里さんの挨拶をぶった切って勢い良くガチャリと音を立ててインターホンが切れ、代わりに玄関の向こう側から走ってくるような音が聞こえてきた。
それからすぐに鍵が開き、扉が開いた。
「……あれま~! すっごい美人さん! ……もしかして、女神様?」
江里さんを見て一瞬驚いたような表情を浮かべていたけど……次の瞬間にはえらく真剣な顔をしてアホなことを言っている我が母。
ホントに女神様って言ったよ……やめてよ母さん! めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!?
あまりの勢いに気圧されたのか江里さんが何も言えないで立ち尽くしていた。
母さんはそれをどう思ったのか、江里さんの両肩を掴んで揺さぶりながら、
「私の20年前にそっくり!」
とふざけたことを抜かしていた。
母さん……尊敬もしてるし、色々と感謝もしてるけど、さすがにそれは調子に乗りすぎでしょ。
天罰が下っても僕は助けないからね。
……そんなことより今僕は江里さんを助けるべきだな。
「母さん! えりさんのことガクガクしないでよ!? ……ほら、離れて離れて!」
「あら? いたの? 君孝」
「いたよ! ……えりさん、大丈夫ですか?」
焦点の合っていないとろんとした瞳の江里さん。
……驚いているんだろうけど、不覚にもかわいかった。
母さんの魔手を引きはがして、江里さんを庇うように間に割って入った。
「……ん? ……だ、だいじょ……ばない」
江里さんの言語力が低下してる! 何してくれたんだ母さん!?
僕が母さんに非難の視線を向けても、そんなものはどこ吹く風と流してゆっくりと口を開いた。
「……君孝! その子をちゃんと母さんに紹介しなさい!」
「……え……えっと同じクラスの――」
「わっ……私は! 江里、美奈……と、申し、ます! そーく……じゃなくって…………君孝…… ……くんとは、お友達……以上の! ……関係ですっ!」
僕の言葉を遮って、江里さん的にはかなり頑張って元気よく言った。途中名前で呼ぶのが恥ずかしかったのか、かわいくうなってたけど……。
――それよりも、江里さぁぁぁぁん!? その言い方は絶対に誤解されるんですけど!?
その、親友……とかでいいんじゃないですか!? ……ただ、親友とかコミュ障の僕にできたことないからよく分からないけど……。
〜レビューへのお礼〜
((●゜ν゜)お布団にくるまってビクビクしている(風邪でダウン)しきはらに代わりまして、今回はよしのが書かさせていただきます!
いがロイドさん、面白いレビューありがとうございます!
(o´Д`)インスタントコーヒーのゴミはちゃんとお片付けしてくださいねー?*笑*
それとリバースシュガーと壁の破片も!*笑*
「……んっ! い、いがロイドさんの……お部屋……お掃除、しても……いいですかっ?」(ほうきとちりとりを持ったメイド服姿のえりちゃん)
相田くんの叫び癖はそーくんママからきてます。
しきはらより





