第60話 江里美奈 きっときゃっと
江里さん視点で物語が進みます(この話のみ)。予告するのを忘れておりました。
座りながら帰る準備をしているそーくん。
いつも私より早く帰る準備を終えてしまうので、今日はHR中からこっそりと荷物を鞄にしまっておいた。
……そして作戦は成功し、私はそーくんより早く準備を終えた。
「そーくんそーくん!」ツンツン
ただ隣からそーくんを眺めているのもちょっぴりつまらなかったので、無防備に曝け出されていた猫そーくんになる脇腹を人差し指でつついた。
「な!? ……なんですか?」
……「にゃっ」って! 「にゃっ」って言った! かわいい! 猫そーくんやっぱりかわいい!
ビクッと身体を震わせて。
辺りを警戒するように私に向けた視線。
本当に猫。
行動が猫。
言動も猫。
そーくんの前世は“きっと”……“きゃっと”だったに違いない。
……んっ!
“洒落が言える人は社交的”って私のコミュ障克服バイブルに書いてあったので、これまでの成長をそーくんに見せつける良いチャンス……! と考えて私は自信満々に口を開いた。
「そーくんの、前世は……きっと……きゃっと!」
……決まりました! 私の渾身の洒落!
これはきっと褒めてもらえると思います! もしかしたらナデナデされてしまうかもしれません!
そーくんが撫でやすいように気持ち首を傾けて待っていたのに、一向にナデナデされることはなく……代わりに聞こえてきたのは、
「……キットカッ○?」
……チョコレートのお菓子の名前だった。
「……ちがう」ツンツン
「みゃっ!? ……ちがう……なにがですか?」
全然気付いてくれないそーくん。
ちょびっとだけムッとしてしまって、腹いせに背後に回って猫そーくんスイッチを両手の人差し指で交互に連打。
当然身体を捻って回避しようとするそーくんだったけど、椅子に座っているので私にされるがままになっていた。
……ねこ、ネコ、猫そーくんなのにっ! なんで気付いてくれないのーっ!?
「……きっと……きゃっと!」ツンツンツンツン
「んにゃぁぁぁぁぁっ!? きっと、きゃっと……?」
「きっと! きゃっと!」ツンツンツンツン
「うにゃぁぁぁぁぁっ!! 分かりました……分かりましたから……やめて下さい!」
「……言って?」
「……おやじギャグ……ですか?」
……そーくんが言ってはならない言葉を口にしました。
……どうやら本当に猫になりたいようです。
座っているそーくんの背後で私も前屈みに。
逃げられないように後ろから回した両手をそーくんの胸辺りでホールドしてから……、
「…… 」
と耳に直接息を吹きかけてみた。
猫も犬もこれをやられると嫌がる。
だからきっとそーくんにも効果があるはず!
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
「……ナン? ……カレー?」
「ち、ちがいます!! 帰りますよ!? いいですか!?」
嫌がるというよりも、慌てた様子でひとりで帰ろうとするそーくん。
「……だめ」
「な、なんでですか!?」
「……いっしょ……だめ?」
「……もちろんです。一緒に、帰ります」
両手を解いて、代わりにそーくんの手を握って一緒に歩き出した。
……お母さんに言われてから知ったことなのだけれど、私が今までそーくんと繋いでいた方法は……恋人繋ぎっていうのだそう。
それを知ってからというもの、どうしても繋ぎ方がぎこちなくなってしまう。
けど私はちゃんと決めたのだ。
ここで引いてはいけないと。
私がなりたいのは、友達ではなく、それこそ恋人なのだと。
――だから私はぎこちなさをカバーするように、指を更に深く絡ませた。
~レビューへのお礼~
な、何が起きているんですか!?(布団にくるまってガタガタ震えながら)
れ、連日のレビュー……!? 5件目……だと……!?
仙人様ありがとうございます!(前方宙返り土下座)
これからは仙人様を糖尿病にするために頑張ります!(笑)
「……あ、あの! せ、仙人さん……お砂糖……もっといっぱい……食べてくださいっ!」(角砂糖を両手に持って満面の笑みの江里さん)





