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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編後半

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第57話 来世分まで消費されたライフ

 本来の文字数。今まで長くしすぎてました(反省)

 喉がカラカラに乾いているのに、手はほんのりと汗ばんでいて。

 深呼吸をしようとしても、浅い呼吸が繰り返されて。

 微かな物音にも敏感になって、僅かな気配に硬直した。


 ……極度の緊張状態だった。今だかつてない張りつめた空気に僕は目をきつく瞑ったまま、動けないでいた。


 体感では永遠にも感じられる無音の時。

 実際は数秒にも満たない刹那の時だったのかもしれない。


「目……勝手に、開けたら……本当に…………怒るからね?」


 江里さんの忠告の言葉は息遣いも聞こえ、もの凄く近くに感じた。

 目が閉じられ意識が全て聴覚に集中しているからか、直接耳に声が注ぎ込まれているかのような錯覚に陥った。

 脳が痺れていくような心地好さが全身を駆け巡っていく。


「は、はい!」


 麻痺した脳は機能せず、考えるよりも早く口から勝手に返事が飛び出していった。


「……ん」


 江里さんの咳払いからしばらくして……僕の首に何かが巻き付いてきた。

 ……多分だけど江里さんの両腕だと思う。

 僕の背後で両腕を曲げて、片方は後頭部を撫でて、もう片方は背中に添えられている。

 そこからは僕の意識が飛びかかった。


「…… (んんっ♡)


 江里さんが僕を抱きしめた。

 真正面からのハグだった。

 正真正銘の抱っこだった。

 フザケ無しの抱擁だった。


 ……そして息遣いではなく、熱い吐息が確かに鼓膜を貫いた。


 僕、昇天。


「……そーくん……あったかい」

「……そーくんのにおい」

「……そーくんのほっぺ……きもちぃ……」


 ギュッと華奢な腕に抱きしめられて。

 首元に顔を押し付けるように埋められて。

 スリスリと感触を確かめるように頬ずりをされて。


 僕は思わず――江里さんを抱きしめ返してしまった。もう、無意識だった。


「……えり、さん」

「…… (あっ♡)


 短いただの驚き。

 ……それなのに妙に艶っぽくて。仄かに色香を帯びていて。

 年頃の僕には刺激が強すぎて。江里さんに想いを寄せる僕には苦しすぎて。


 僕は抱きしめる力を強めてしまった。


「……そーくん………………ちょっぴり、 (くるしぃ)……」

「ごっ! ごごごごめんなさいぃっ!!」


 江里さんの言葉にハッとなって、瞬間的に背に回していた手を離して謝った。……全力で謝った。


「……ご、ごはん……たべよっ?」

「……はい」

「……目、あけて?」


 許可が下りたので瞼を開けたら江里さんが普段通り隣席に座っていた。

 お弁当を用意しているので顔は見えないけど、髪の隙間から除く耳は先端までほんのりと朱に染まっているように見えた。


 ……き、気まずいというか、恥ずかしい。江里さんの顔が見れない。


 どうやってこの時間を乗り切ろうかと考えていたら……、


「……そーくん……足広げて?」


 ――今度はそんな注文が僕につけられた。

 ……もうやめてぇぇぇぇぇ!? 僕のライフはゼロどころか、来世分まで消費されてる気がするんですけどぉぉぉぉ!?

 ずっと江里さんのターン!

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