第56話 ……なんでもって……言ったぁ……
お昼休みに突入してすぐのこと。
僕が椅子に座って教科書を机にしまっていたら……、
「そーくん! ……ごはんいこっ? ……ごーはーんー!」
すぐ後ろから聞こえてきた甘えてくるような声。
そして僕が返事をするよりも早くその声の主は行動を実行した。
……え? えぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なんでぇぇぇぇぇぇ!?
僕の頭の上に何かが乗った。
声の主が「ごーはーんー!」と言う度に僕の頭にも振動が伝わってくる。
それに上から垂れてきているのは川のように流れる長い黒髪。
……どう考えても江里さんが僕の頭の上に頭を乗せている気がする。
「……え、えりさん!?」
「……なーにー?」
いやいやいや! 「なーにー?」なんてのん気に答えてる場合じゃないですって!! 何してるんですか!?
僕を殺すつもりですか!?
「た、立てません!」
「……おなかすいて?」
ノォォォォォォウ!? そうじゃないですよ!? なんで離れてくれないの!?
どう反応すべきなのか。
それにクラスメイト達がこっちを向いてから、口をポカンと開けて固まってしまっていて。
異様な空気に包まれて僕がパニックに陥っていたら、頭の上でもぞもぞと江里さんが動き出した。
な、何してるんですかホント!?
「……そーくんの…… 」
「にやぁぁぁぁぁぁ!?」
しばらくしてから聞こえてきた江里さんの微かな呟き。
そこで僕は勢い良く立ち上がった。もう強引にでも抜け出すにはこれしかなかった。
「……い、いたいっ!」
「早く、ご飯行きますよ!」
「……あっ! ……んんっ♪」
このまま江里さんに好き放題させたら何をやらかすか分かったものじゃないので、手を握って僕が引っ張る形で逃げるように教室から飛び出した。
……ちなみに僕らが教室から出てすぐに「「「「「オロロロロロッ!」」」」」という複数人の絶叫? が聞こえてきた。……皆何してるんだろう?
足早に廊下を抜けて。
一段飛ばしで階段を駆け上がって。
隠れるように司書室へと潜り込んだ。
「……そーくん?」
「……えりさん、そこに座って下さい」
僕は若干怒っていたのかもしれない。
人の気も知らないで気まぐれで猫のように近づいてくる江里さんに。
「……ん」
「いいですかえりさん? もしも……ですよ? 僕がさっきえりさんがしたようなことを今したら、どう感じますか?」
「……ん~~~。……うれしい?」
あっ、ダメだこれ。通用しないパターンのやつだ。
「……ご飯食べましょうか」
「……してくれないの!?」
僕があきらめてご飯を食べましょうと催促したら、もの凄く驚いてきょとんとした江里さん。……なんでっ!?
「……ご飯食べま――」
「――してっ! あたまのっけて!」
「……えりさんごは――」
「――してしてしてーっ!」
最近江里さんの駄々っ子GODDESSがパワーアップしている気がするのは、僕の気のせいではないと思う。
……だが僕も引かなかった。
恥ずかしさで後で悶え死ぬ姿が容易に想像できたからだ。
「えりさんご飯食べましょう」
「…………」
……だけど江里さんも引かなかった。
無言で頬を膨らまし口を尖らせて、プイっと明後日の方向に顔を向けて何やらご立腹の様子。
「……えりさんご飯」
「……いまわたしおこってる」
頬を膨らましたまま喋りにくそうにそう言った江里さん。
……本人は怒っているつもりなのかもしれないけど、残念ながらただかわいいだけだった。怖さなんて微塵もない。むしろふくれっ面をしている江里さんはちょっと面白い気もする。
「……ごめんなさい。頭乗せる以外なら、なんでもするので許して下さい」
「……なんでも?」
これはもしかして選択を誤ったかもしれない……。
「……僕にできる範囲で」
「……なんでもって……言ったぁ…………なんでもって、言ったもん!」
うん。絶対に間違えた。
江里さんはゆっくりとこっちに振り向いて、僕の両手を掴んで隣の椅子に座らせながらやけに真剣そうな表情をして言った。
なんでもって僕から言ってしまったんだし、今ここで何かを言っても覆る気はしなかったので、男に二言はない! の精神で開き直ることにした。
「……分かりました」
「……んっ♪ なら……目……閉じて?」
――な、ななななにするつもりですかぁぁぁぁぁぁ!? 恐怖や緊張、それに少しばかりの期待を抱いて僕は言われた通り、目を瞑ったのだった……。
本日よりしきはらのお仕事の担当部署が変わり、これまで以上の仕事量になるので、更新遅れ気味になるかと思います。
すみません。
うわぁぁぁぁぁぁぁん! もうデスマはイヤなんじゃぁ~! 人がどんどんやめていくのは見たくないんじゃぁ~!(ごめんなさい)





