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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編後半

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第54話 ふたりはぽんこつでコミュ障

 江里さんは僕の首に両腕を回してたすきのように抱き着いてきた。

 見れば僕のことを潤んだ瞳を湛えて至近距離で見つめて「いっちゃ……やだぁ……」と呟いていた。


 ……もうね、叫ぶことすら叶わない。

 声無き絶叫、無言の悲鳴。


 江里さんの甘い香りが僕を包んで。

 江里さんの柔らかい身体に包まれて。

 意識はどこかに飛んでいった。


「なんでダメなんだ?」

「……そーくんと、いっしょが……いいの」

「その江里の気持ちは分からんでもない。……だけどな、江里にだって相田に聞かれたくない話しのひとつや、ふたつ、あるだろ?」

「…………」少しボーっとしてから無言のまま、もの凄い勢いで何度も首を縦に振る江里さん


 僕が放心状態に陥っていたらいつの間にか半田くんが江里さんを頷かせていた。


 す、凄い! 半田くん本当に凄い! もしも僕が女の子だったら、半田くんに惚れていたと思う。


「そう言うことだ……じゃあ少し相田のこと借りるぞ」

「……ん」


 そういえば今更なんだけど、江里さんには聞いたのに、僕の意思は確認されないの? 行く前提なの?


 ……まぁ、行くんだけどね。


 僕が立ち上がろうとしたことを察知して江里さんがスッと離れて「……いい子で、待ってる!」と決意を口にした。

 それはいいんだけど、なんでそんなに真剣な顔付きをしているのか? ……変に意気込んでいる江里さんに少し笑ってしまった。


「……半田くん……お待たせしました」


 僕が半田くんのところに着いたのとほぼ同時に、後ろの方で椅子が引かれる音がした。


 ……江里さん何してるんだ?


「わざわざすまない相田」

「……それで、どうしました?」

「……あぁ、それなんだが……」


 そう話す半田くんは……僕を一切見ていなかった。

 視線は僕の後ろに固定されていて、鋭い黒目が右に左にと何かを追うように動いている。


 ……半田くん?


「他の奴らが登校してきて、朝一であんな殺しにかかって(いちゃ)くるような姿(ラブ)を見せられたらどうなると思う?」


 何故か声のトーンを落とした半田くん。

 江里さんから離れたというのにどうしたのか?

 ……それと半田くんの言っている意味が分からなかった。「殺しにかかってくるような姿」ってなんだろう?


「……どういうことですか?」

「……それを説明する前に――江里をどうにかしてくれ」


 半田くんの視線の先を追いかけて僕も振り返ったら……、


「……ぷすー! ……ぷしゅー!」


 江里さんが後ろ手に指を組んで。

 本人的には口笛を吹いているつもりなんだろうけど、全く鳴っていなくて。

 挙動不審にあっちにこっちにと、歩き回りながら徐々にこっちに近づいて来ていた。


 江里さんって口笛吹けないのか……なんか、かわいい。

 ……それと半田くんが「どうにかしてくれ」って言っていた意味がようやくそこで分かった。


「……口笛の吹き方を……教えてあげればいいんですか?」


 つまり、口笛をちゃんと吹けていないのはかわいそうだから教えてやってくれ、ということなのだろう。


 ……さすが半田くん! こんな気遣いができるなんて……きっと半田くんはモテるような気がする……!


「……相田……はぁ~~~~~~」


 てっきり半田くんに「頼む」と言ってもらえるのかと思っていたら実際に返ってきたのは、ながい、長いため息だった。……な、なんで!?


「あれが“いい子で待っている”ように見えるか?」


 僕の肩をポンと叩いて江里さんに目線を向けてから半田くんが言った。


「……た、確かに……いい子じゃないかも……しれません」


 半田くんの言う通り、口笛というのは実際あまり行儀の良いものではない。

 そうなると確かにいい子ではない。……半田くん鋭い!


「ならちゃんと注意してくれ。それが相田(彼氏)の責任だろ」


 ……僕の責任って?


 理解はできなかったけど、注意はした方がいいということは分かったので江里さんに声を掛けた。


「……江里さん」

「……お話し、終わった?」


 挙動不審な動作を止めてパッと華やかな笑みを浮かべ、僕に向き直った江里さん。


「まだですけど……いい子に待ってる……って言いましたよね?」(口笛は行儀が悪いと思うので、やめた方がいいですよ)

「…………」


 江里さんはさっきまで浮かべていた笑みを消して、瞳は潤いを纏い少しずつ下唇が突き出てきて――半べそ状態になった。


 ……半べそ江里さん反則すぎじゃないかな? 僕の罪悪感が凄い!


「……江里さん?」

「……いいこ、する……」


 そう言ってから江里さんはパタパタと小走りで自分の椅子まで戻って行って、借りてきた猫のようにちょこんと座った。

 ……心なしか落ち込んでいるようにも見える。


「……それで相田、話しの続きだが」

「……うん」

「江里があんな様子を晒していた時、他の奴は今までどうなった?」


 ……今まで……あっ!!

 やっと、ついに、半田くんが言いたかったことが分かった。そういえば半田くんが最初に言っていた。


「……気絶」

「そう言うことだ。だからあまり人前で変なことはするなよ?」


 ――破顔一笑してから踵を返した半田くんは、道着を肩からぶら下げ「――分かったか、バカップル?」という言葉を残して、のそのそと部活に向かって行ってしまった。


 ――えっ!? バカップルって?


 そんな僕の疑問に当然答えなんて返ってくる訳はなかった。

 江里さんに近づくお邪魔キャラ(かませ犬)的なものを後に登場させようか悩んでおります。

 読んでいただいている皆さんのヘイトを溜めてしまっては意味ないので、感想でご意見いただけるとありがたいです。


 今までふたりは“ただの”隣人、友達関係→ブラック無糖

 付き合い始めるまでの駆け引き→微糖~低糖

 付き合ってからのふたり→MAXコーヒー


 こんなイメージです。

 感想返信遅れてます! すみません!

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cool

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