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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編前半

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第42話 けっ……携帯、番号……教えてくだしゃい!

 しばらくポカーンとしていた江里さんだったが、毛先を指でクルクルといじってからゆっくりと首を傾げた。効果音を付けるならばコテンといった感じ。


「……ん?」

「呼び方……美奈さん?」

「……ち、ちがう! ……けど。……ちがうけどっ!?」


 江里さんは僕の手を両手で掴んでブンブンと縦に振って、何かを必死に伝えようとしている。

 頻りに顔を左右に振って「だめ……じゃなくて…………けど、それだと……」とも呟いていた。


 ただ、ひとつだけ分かったことは僕の呼び方が合っていなかったということ。

 ……ダメだ。全然思い出せない。そもそも思い出せる気がしない。


「心の、準備……できたらで……いい?」


 自分の中で整理がついたのか、それなりの時間が経ってから動きを止めた江里さん。

 頬だけではなく耳まで紅潮させているのにしかつめらしい顔を顔面に貼り付けて。

 乱れた前髪の隙間から覗き見るように潤んだ瞳で僕を見上げて、声は緊張しているのかいつもより少し高かった。


 ――そして僕の手を両手で掴んだまま、祈るように……胸元へ。


「はっ、ははははははい!!」


 動揺。そんな言葉で表すのなんて生ぬるい。

 一体「は」を何回言ったんだろうか? 第一何に対しての「はい」だったのだろうか? と、もはや冷静になってしまうほどに客観視している自分がいた。


「……がんばるっ!」

「ファ……ファイトー!」


 江里さんが何かを頑張ってくれるということだったので、僕が出来るのは応援することだけだ。

 何となくそんな言葉をかけてみたら……、


「…………いっぱっーつ?」


 そう言ってほっとしたような笑みを浮かべ、首を傾げてから「ん゛~~~っ!」と、僕を引き寄せようと引っ張る江里さん。


 ……なんてこった!

 シンプルにただただ、かわいい!

 もうかわいさあり余ってCMのオファーがくるんじゃないかと思うほどのインパクトだった。


「はい……帰りましょうか」


 自然と笑いそうになってしまったので江里さんを引っ張って歩き出そうとしたら……動かない。

 後ろを振り返ってみると何故か江里さんがその場から動こうとしなかった。


 なんだろう? もしかしてさっき僕がやったことを実は根にもっていたとか?

 ……いや、江里さんがそんなしょうもないことをするとは思えない。


 見ていたら急にそわそわと落ち着きが無くなっていって、目線は両手で掴んでいる僕の手を見たり、空中を彷徨ったりと忙しく動いていた。

 それから「……んっ」という咳払いをしておもむろに片手を離し、ブレザーのポケットからスマホを取り出して操作し始めてしまった。


 え、江里さぁぁぁぁぁぁん!?

 帰らないんですか!?


「……あ、の……そーくん……」


 少し経ってから顔を上げた江里さんが僕の眼前にスマホの画面を向けてきた。

 見れば画面には“私の電話番号です。090~”と書かれていて、その下には同じようにメールアドレスも表示されていた。


 ……そして江里さんが更に画面をスクロールして現れたのは“そーくんの電話番号、メールアドレス”と書かれた空欄だった。


「けっ……携帯、番号……教えてくだしゃい!」


 あ、江里さんが噛んだ。

 恥ずかしそうに俯きながらこっちを見る江里さんのかわゆきこと、かわゆきこと。

 反則なんですけどぉぉぉぉぉ!?


 ……なんて呑気に考えている場合ではなかった。


 ――何故ならば、僕はこの申し出を断らなくてはならないからだ……。い、胃が痛い。

 相田くん何やら訳有りのご様子。

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cool

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