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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編前半

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第40話 マネキンチャレンジ

 昨日の悪夢がよみがえる中、放課後へと突入した現在。

 僕は…………誰にも取り囲まれていなかった。

 周りを見ればクラスメイト達は普段通り帰る準備をしていたり、いつも通り部活の用意をしていたりと、これまで通りの光景が広がっていた。


 昨日の今日で何があったんだと違和感がもの凄かったけど、何もないならそれに越したことはないと考えて帰り支度を手早く済ませる。


 ……そして帰ろうと席を立ったところで、


「そ、そーくん!」


 隣の席で僕と同じく、何故か急いで帰り支度をしていた江里さんから声を掛けられた。


 ――その瞬間皆ピタリと動きを止め、音が止んだ。

 ……な、何!? 怖っ! 今流行りのマネキンチャレンジでもしてるのかな?


 取り敢えず振り返ってみたら江里さんが手ぶらで立っていた。見れば帰り支度が間に合わなかったようで、机の上にファスナーが開いたままの鞄と教科書が置かれている。


「……はい」

「一緒に……帰るの……だめ?」


 その言葉とともに近付いてきた江里さんが僕の手をおそるおそる握った。お昼のごはん粒事件の衝撃が強すぎてもう驚かないけど、やっぱり恋人繋ぎだった。

 深く絡んだ江里さんの指は冷たくて、微かに震えていた。きっと緊張していたのかもしれない。


 僕は迷うことなく返事を口にした。答えはもちろん……、


「……帰りましょう」


 イエスだ。


 そもそも断るという選択肢はないけど、もし断ってしまった場合は体育座りで縮こまって落ち込む江里さんを見ることになるのだ。……あの罪悪感をもう一度味わうくらいならば、今この場でクラスメイト全員から袋叩きにされる方がまだマシだと思う。


「……んっ♪ かえるっ!」


 そう言って僕の手を引っ張ってご機嫌に歩き出そうとする江里さん。

 ブンブンと揺らす片手を僕と繋いで、もう片方の手には何も持っていない。……鞄はいいのかな? いや、そんな訳ないか。


 そのまま僕がその場にとどまっていたら、江里さんが歩き出してしまい――繋いだ手がピンと張った。


「んっ!?」


 江里さんが驚いたように振り返って、頬を少しだけ膨らませてから……、


「……ん゛~~~~っ! かーえーるーっ!」


 繋いだ手をかわいく唸りながら引っ張り始めたのだった。


 なんだ!? ……なんだこのかわいい女神さまは! 

 もしかして僕の魂を天界に運んでくれようとしているのかな? むしろ悪魔だったとしても喜んで魂を捧げるまである。


「……鞄は?」

「…………んっ!!」


 僕の言葉にやっと自分が帰り支度すら終えてないことに気が付いたのか、恥ずかしそうに頬を染めた江里さんは何故か手を繋いだまま席に戻って、器用に片手で鞄に教科書をしまい始めた。

 両手の方がやりやすいだろうと思って僕が指を解こうとしたら、それを察知してか更にギュッと絡められた上に、「……やだぁ」と呟かれてしまった。


 僕、昇天寸前。危うく立ったまま気絶するところだった……。


「……ん。できた!」


 しばらくしてからどこか嬉しそうに、誇らしそうに鞄を掲げた江里さんが僕に向かって笑みを溢した。


 ……………………ハッ!? 僕、今完全に気絶してた!?


「……帰りましょうか」

「……んっ♪」


 ――こうして僕らは誰も動かないホラー空間から脱出した。……ちなみに教室を出る際に、江里さんが無邪気に「だるまさんがころんだ……楽しそう」と零していたのを僕は聞いてしまい、なんだか面白くなって少し笑ってしまった。

 しきはら今週出張のため火水木が更新できません。

 感想のお返しも、もしかしたら金曜日まで返せないかもです。

 すみません。

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9月30日双葉社様から発売です!
cool

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