第29話 ここを永住地とする。
校門を抜けたところで立ち止まった江里さん。
頻りに顔を動かして辺りを見回してから、目を瞑って「…… 」と悩み始めた。
一体どうしたのだろうか?
「……相田くん、どっち?」
しばらくして熟考を終えた江里さんが、繋いでいない方の手で左右の道を指差した。
校門を出ると左右に道が分かれているので、どっちに行くかということだろう。
「……あっち」
僕は普段の通学路である方向を指差した。
ここで方向が違ったら一緒に帰るという目標はいきなり頓挫してしまう。
……江里さんに先に答えてもらってから僕が合わせればよかった。
神様! 女神様! どうか江里さんと同じ方向でお願いします!
「良かった……いっしょ♪」
屈託のない笑みを浮かべた江里さんが嬉しそうに手をギュッと握ってきた。……ぎゃぁぁぁぁ! かわいいのは分かってるんで、これやめてぇぇぇ! 僕の精神が崩壊する……。
僕がそれに放心していたら何故か江里さんが「……ん?」と首を傾げている。
そしてそのまま特に何も言うこともなく、僕を連れて歩み始めた。
何で首を傾げたのだろう?
僕は答えの出ない問いに狼狽えながら歩みを進めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
歩いている時は特に会話もなく、分岐で立ち止まる度に江里さんとこのやり取りを行い、その都度手を握られた。
ある時は強く指が絡まり、またある時は包み込むように優しく。……口で伝えられないコミュ障な僕らの行いを補うように。
「どっち?」
「こっち」
何度目の分岐だったか正確には覚えていないけど、ここで方向が違うんだということは江里さんの表情を見てすぐに分かった。
それまで同じ方向であることに安心したかのように笑みを浮かべたり、小さくガッツポーズをしていた江里さんだったが、ここにきて視線が彷徨い、困惑したように下唇を噛んでいた。
しばし「……ん゛~」と何かを考えるように唸ってから……、
「い……いっしょ……」
目を逸らしたまま、ぎこちない手つきで僕と同じ方向を指差した。
ひとつ分かったこと。
江里さんはすぐに顔に出てしまうので、どうやら嘘がつけないらしい。
美人でかわいくて、文武両道で嘘がつけない……聖女かな?
できるだけ優しく江里さんに問う。
「江里さん、本当は?」
ゆっくりと僕に目線を合わせ、沈んだような顔つきで江里さんは口を開いた。
「…… 」
弱々しい囁きは殆ど聞こえなかったけど、指差した方向が僕とは反対の方向だった。
やっぱり違ったか。気付けてよかった。危うく江里さんを遠回りさせるところだった。
このまま手を握っていると帰りたくない衝動に駆られるので、僕は意を決して指を解こうとしたが……、
「やっ! ……やだぁっ……だめーっ!」
僕の行動を察知した江里さんが、縋るように更に指を絡め、繋いだ手を引っ張って、無邪気な抵抗をしてきた。
若干涙目になりながらきゅーっと眉を顰めている江里さん。おまけに顔をイヤイヤと左右に振っているため、長い黒髪が舞って甘い香りすらしてくる。
「……住みます」
そのかわいさといったら、ノータイムでここに永住する決意をしてしまうレベルだった。
――どうやら僕はここから帰れないらしい……。
すみません執筆に集中するあまり、感想のお返事が書けていません。明日にはお返事します!
みんな感想で砂糖吐きながら、壁殴ってくれてありがとうございます(笑
ただ作者的には物語の進行上、“まだ砂糖を吐かせているつもりはありません”。(笑
このまま行ったらみんな……気絶しちゃいますよ?(笑顔
~お礼と更新宣伝~
ついにポイント評価をして下さった方が150人を突破しておりました!
まさかこんなことになるなんて(汗
皆さんありがとうございます!
定期更新で頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします!
それと、
『元中二病患者の俺がちょっとした心理学を駆使した結果、何故か学園一の美女と協定を結ぶハメになったんだが……』
http://book1.adouzi.eu.org/n0415cm/
も先程更新しました。お暇がありましたら読んでいただけると嬉しいです。以上!





