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僕のクラスには校内一有名な美人だけどコミュ障な隣人がいます。  作者: 識原 佳乃
本編前半

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第11話 久々にフリーズ

 年に1回行われるスポーツテストは全学年合同のため、近くの川沿いにある大型スポーツセンターで実施される。

 普通に体力測定をして1日が終わるスケジュールなんだけど、問題はお昼ごはんが各自持参という点だ。

 僕は普段お昼を学食でとっている。学食にはコミュ障にありがたい通称、ぼっち席と呼ばれている場所があるからだ。

 この席は壁向きに椅子がセットされた席で……ってこんな悲しい解説はおいておくとして、今の僕はお昼ごはんがないのである。


 ……まずい。

 スポーツテストでお昼ごはん抜きとか苦行でしかない。


「……すっかり忘れてた。ありがとう、江里さん」


 とりあえず江里さんにお礼を言って、体操着を持って更衣室へと向かう。

 今日は通常授業に体育があったので体操着は持ってきていたのがせめてもの救いだった。


 手早く着替えを済ませて教室に戻ると……なぜか江里さんが僕の席に座って机に突っ伏していた。……え? なんで?


「え、江里さん?」


 事態が呑み込めず上擦った声でおそるおそる尋ねてみたら、江里さんがビクリと震えた。

 例えるならイタズラがバレた時の子供のような反応だった。


「そ、そのっ! ……寝心地が、いいのかなって……ごめんなさい!」


 そう言いながらゆっくりと顔が上がってきて、僕と目が合った途端、飛び上がりそうな勢いで立ち上がった江里さんだったが、次の瞬間には顔を伏せていた。


 寝心地ってどういうことだ? さすがにコミュ障スキルをもってしても補完しきれないぞ……。


「寝心地は……どうでした?」

「……ん。えーっと、あの、よくわかりませんでした……緊張で」


 意図が読めなかったのでそのままの疑問をぶつけてみたら、江里さんが焦ったように顔を明後日の方向に向けてそう零した。


 さて、僕はどうすればいいのだろうか。どうするのが正解なのだろうか?


 正解なんて分かるはずがなかったので、会話の転換を図ってみた。


「あーっと……今日スポーツテストですよね?」

「は、はい。スポーツテストですよ」

「お昼ごはんって……どうします?」

「……お昼ごはんですよね!?」


 しきりに目を(しばたた)くと、何故か驚いたように僕に聞き返してくる江里さん。


「……は、はい。お昼ごはんですよ」

「し、深呼吸しても、いい……ですか?」

「……は、はい」


 くるりと後ろを向いた江里さんは2、3回腕を広げたり閉じたりを繰り返して深呼吸をすると「……ん、んんっ」と小さく咳払いをしてから、僕に向き直った。

 僕はというと江里さんが向きを変える度にふわりと広がる絹糸のような黒髪に目を奪われていた。


 心なしかシャンプーの甘い香りまでするぞ……なんて考えをしていたのが悪かったのか、僕は次の江里さんの言葉で久々にフリーズしてしまった。


「……みっ! ――未熟者の、私ですが、よろしくお願いしましゅ……!!」

 二人の会話を補完するとこうなります。


「お昼ごはんって……どうします?」(江里さんはお昼ごはんどこで食べるんですか?)

「……お昼ごはんですよね!?」(相田くん! お昼をご一緒してくれるってことですか!?)

「……は、はい。お昼ごはんですよ」(もしかして江里さんもお昼ごはん忘れたのかな?)

「し、深呼吸しても、いい……ですか?」(一旦落ち着きましょう……お願いするのはそれからでも遅くはないはずです!)

「……は、はい」(わ、訳が分からないよ!)

「……みっ! ――未熟者の、私ですが、よろしくお願いしましゅ……!!」(あっ……また噛んでしまいました……深呼吸したのに……)

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