第1話 容姿端麗で文武両道の完璧超人はきっと……コミュ障
この物語はフィクションです。
実在又は歴史上の人物、団体、固有名詞、地名、国家、その他全てのものとは名称が同一であっても、一切関係はありません。
又、誤字、脱字を発見していただけましたら、報告していただけるとありがたいです。
僕のクラスには学年どころか、校内一の有名人がいる。
漆のように艶やかな長い黒髪に猫のように大きくて、それでいて切れ長なアーモンドアイ。
白磁を思わせる白い肌にほっそりとした長い手足ですらりと背は高く、まるでモデルさんのようなプロポーション。
まさに容姿端麗。美少女と言うよりかは美人という言葉がしっくりくる感じ。
チョークを握れば先生が出題する意地悪な問題さえ解いてしまう知能、アカデミック・スマート。
定期考査は入学してからその頂を他者に譲ったことはない。皆も彼女が頂点に君臨することが自然の摂理であるかのように、当たり前として受け入れている。
おまけに運動神経も抜群ときて、走れば陸上部から「君は世界を目指せる!」とバトンを渡され、跳べばバレー部から「君は五輪を狙える!」とバレーボールを託され、打てばソフトボール部から「君は宇宙を統べる!」とバットを捧げられ、泳げば水泳部から「君は人魚姫のようだ!」と単純に称賛される始末。
そんな容姿端麗で文武両道の完璧超人……に見える有名人――江里美奈さんには実は弱点がある。
「江里さん消しゴム落としたよ。はい」
「…………」謝意を表すようにこくりと無言で頷き。
「江里さんプリント回収しまーす」
「…………」閉口したまま硬い動作でプリントを差し出し。
「江里さん! 初めて見た時から好きです! 俺と付き合って下さい!」
「…………」沈黙を貫きながらぎこちない所作で頭を下げる。
こんな感じでほとんど声を発しないのだ。
皆はこの江里さんの様子を、お淑やかだとか、ミステリアスだのクールビューティーだの飾らない人だのと、プラスに捉えているけど僕にはそうは見えない。
……何故ならば、恐れ多くも僕も江里さんと同じだからだ。
――そう、きっと江里さんは対人コミュニケーションが苦手な……いわゆるコミュ障なのだと思う。





