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70話

 ドイツの学校の授業というものは、あまり教科書を使うことはない。というのも、例えば歴史の授業では流れを習うより、なぜこの人物は争うことを決意したか、なぜ革命が起きたか、などの『なぜ』を自分の考えで発言することが多い。当たっている、間違っているというのは問題ではない。自分の考えを持つこと、それが大事なのだ。


 現在、ユリアーネの一時間目はフランス語。苦手な科目ではない。二人がけの机。隣の生徒は、ノートに何かをメモしている。こちらも教科書などはあまり使わず、三〇人ほどの生徒達がフランス語で会話する。発言しつつも、窓の外の木々を見ながら、頭の中では店のことを考えてしまう。


(コーヒーは繊細な飲み物です。湿度、温度、焙煎の具合で、同じ豆でも全く違う味になります。しかし……どこまで理想を求めるべきなのか、アルバイトの方々に押し付けすぎてしまうのも、よくありません)


 塩梅が難しい。こんなときアニーさんなら……。


 <起きてます?>


 朝のメッセージが蘇る。そういえば返してない。未読も何件か溜まっている。一体どうしたんだろう。聞いてみる必要があるかもしれない。


「なんか、ハラハラします……」


 なぜだろう、緊張する。もしかしたら気付かないうちに、アニーさんになにか失礼なことをしてしまったのかもしれない。にしては、大量に送られてくるメッセージはなんだろう。頭の中、胸の内をモヤモヤとした考えが渦巻く。


 今日の授業は一四時まで。その後、自分はシフトに入っている。アニーは休み。少しだけ、ホッとする。が、同時にハッキリともさせたい。またモヤモヤ。学校は広く、授業も違うので会う機会はない。


「あー、もう……」


 考えなきゃいけないことは多いのに、アニーのことも考えてしまう。でも、働いていれば、その間は仕事に集中できる。申し訳ないけど、アニーさんのことはその時間は考えずにすむ。携帯も見ない。それでいい。しかし。


「……なんでいるんですか……?」


「なにがっスか? ボク、一応店長なんで。店が気になって来ただけです」


 店に到着したユリアーネがバックヤードのドアを開けると、四人がけの正方形のテーブルがひとつ。イスが四つ。アニーがひとり。満面の笑みで。少し悪寒がしてくる。


「今日は休みのはずですけど」


 冷や汗をかきながらユリアーネが更衣室に入り、カーテンを閉める。バックヤードの隅にあるため、顔は見えないが、会話はできる。


「だから言ってるじゃないですか。気になったので来ただけっスよー。もう、やだなー」


 ケラケラと笑いながら、心配性なユリアーネをアニーは気づかう。まぁ、おかしい話ではない。一応、その通り店長。休みでも来てしまうことはあるだろう。

ブックマーク、星などいつもありがとうございます!またぜひ読みに来ていただけると幸いです!

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