58話
その日も、先に起きたアニーが、ベッドの上で横向きに寝るユリアーネを起こすところから始まる。
「おはようございます」
「おはよう……ございます……今日も早いですね」
寝ぼけ眼でユリアーネは洗面台へ向かう。起きてすぐは頭が働いていないため、自分の寝相などを知らずにしばらく過ごす。戻ってくると、ベッドに腰掛けてボーッとするのが日課。パジャマも若干はだけているが、アニーしかいないので気にしない。家ではズボラなタイプ。
「ふふふ……今日はあれの日ですよ」
その隣にアニーも座り、朝のトークの時間。何気ない会話も楽しい。
「あれ?」
なんでしたっけ? と、まだ頭が正常に働いていないユリアーネは、昨日のことを思い出す。えーっと、エスプレッソコーラを作って、飲んで、それで学校に行って……なんでしたっけ?
「昨日言ってたものです。コーヒーもちょっといいな……って思っちゃったので、今日はユリアーネさんに紅茶党に鞍替えしてもらうための勝負です」
そのアニーの発言を聞いて、ユリアーネは思い出す。そういえば飲んでほしいものがあると。いつも驚きの紅茶をいただいているが、なにやら今日は対抗意識がある模様。少し、面白い。
「勝負……って、なにかしてましたっけ?」
そこだけは思い出せない。はたしてなにかあっただろうか。そもそも、勝ち負けはなにで決まるのか。
全く覚えていないユリアーネに、アニーは少しムッとしながら、強気に言い寄る。
「コーラですよ、コーラ。エスプレッソとコーラでわりかしいい感じだったので、紅茶とコーラも美味しいってことを伝えようと」
なんとなく、自分がコーヒーを認めてしまうと、紅茶全体が負けを認めてしまうような気がして、せめて気迫だけでは負けていないと表現する。もし、コーラ対決で紅茶のほうがいい、とユリアーネが思えば、それはアニー基準で勝ちになる。ゆえに負けられない戦い。紅茶界全体を勝手に背負う。
そんな気迫に気圧されつつも、ユリアーネは冷静に対処する。
「え……さすがにコーラと紅茶は……いえ、なんでもないです。なにが合うかわかりませんからね」
ここ最近、何回も、合わないと思ったものが美味しかったりした。そして、売上を伸ばすなら他ではやっていないなにかをやらねば。文句は試してからにする。
「とは言っても、普通のコーラじゃなくて、こちらになります」
当然、アニーは普通では終わらない。完成されたものに、余計なひと手間を加えるのが好き。研究こそが生き甲斐。持ち出したものは、透明な一リットルほど入るクリアボトル。その中に半分ほど入った茶褐色の液体。そして炭酸水。
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