35話
「メニューもだいぶ、その色が強いみたいですね」
おまかせがあるくらいなのだから。
「うん。森は始まりの場所であり、辿り着く先でもあるらしい。何度でも来てほしいって意味も込められてるんだって。でも、ユリアーネさんは新しいオーナーなんだから、変えてしまっても問題はないよ。一番権力があるんだから」
「そんな話聞いて変えられるわけないじゃないですか。それに、好きですよ。北欧の神秘的なところとか」
まだわからないことだらけであるが、きっともっと好きになっていく。そんな予感がユリアーネにはしていた。ここでよかったのかもしれない。
「そっか。うん、ありがとう」
ひとまずは一件落着、とダーシャは片付けた。これから色々と大変になることと、ユリアーネに助けてもらうこと。先行きは不安だけど、楽しみが勝つ。なにより悪い店員を躾ける手が増えたのは嬉しい。
「でもダーシャさんはそのまま店長代理でいいんですか? 実際の店長業務はダーシャさんがやっているわけですから、店長に昇級しますか?」
不可能ではない。自分がここのオーナーなのだから。ユリアーネは円滑に事業が進むなら、正直どちらでもいい。アニーはなんだかんだで、自分の店のためならなんでもやるだろう。なんとなく、二日間のやり取りでわかってきた。
しかし、ユリアーネの予想通りでもあるが、ダーシャの答えは現状維持。
「いや、そのままでお願いします。彼女は不思議な魅力があるからね。みんなが支えるタイプの店長がいい。僕は……お給料さえ変わらなければ……」
そこだけがダーシャのネックだった。一番気になるところ。
「そこは問題ありません。引き続き、よろしくお願いいたします」
新オーナーの鶴の一声に、ダーシャは安堵した。
「ありがとうございます。であれば、特に不満もないし、このままいければーー」
「店長、ここにいたんスか。ちょっと聞いてくださいよ。ケーエマンあるじゃないですか、あれ二個あったんで、予備かと思って一個食べちゃったら、なんと! 双子だったんですよ! ビックリ! インド人もビックリです」
という、駆け込んできたアニーの一言。興奮気味だ。なんてこった、と自身の額をペシっと叩く。
「あとお願いしますね」
とだけ残して、ホールへ戻っていった。
残されたダーシャとユリアーネ。店長代理とオーナー。
「前途多難ですね……」
やっぱり間違えたかも。そうユリアーネは小声でこぼした。
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