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311話

「ユリアーネさんも来れたらよかったんですけどねぇ」


 誘ってはみたものの、都合がつかず今回は断念。悔しそうにしていた彼女の表情を思い出すと、ものすごく申し訳ない気がしてきた。


 なので珍しくひとり。いや、少し前まではこうして休日はブラブラと予定もなく、ひとりで出歩いていた。学校でも特に目立つほうではない。明るく社交的ではあるが、積極的に友人を作っていこうというわけでもない。静かに紅茶を楽しめればそれでいい人生。


 シシー・リーフェンシュタールのように、物事話題全ての中心にいるわけでもない。でもそれでいい。控えめだけど濃い人生。なんだかあてもなく市を彷徨っていると、そんなどうでもいいことを考えてしまう。故郷よりも賑やかで。慌ただしくて。刺激があって。


 時折、隣に声をかけそうになる。「ユリ——」と。そこで止まる。残像が見えるような。それくらいいつも一緒。もちろん、別々に行動することなんてたくさんあるし、むしろそっちのほうが多いのに。いてほしい、と願ってしまう。


「ま、たまにはいいっスよねぇ。のんびり。じっくりと見て回れるのも」


 なにかを買う、でもない。もし気に入ったら買う、くらいのスタンス。無理して買っても愛しきれないかもしれないから。もちろん、あとになって「買っておけばよかった」なんてこともよくある。でもそれも縁。本当に縁があるのなら、きっとまた出会える。


 せっかくなのでカフェに入ってみる。そこまで広いわけではないが、壁紙の統一された白や、アンティークなテーブルセット、その上にそれぞれ置かれた小さなフラワーアレンジメントが心地いい。チーズケーキの専門店。ドアを入ってすぐ左手のショーケースにある、様々なケーキから選ぶらしい。


 ほどよく混み合う店内。壁側のソファー席に座る。対面のイスにはもちろん誰もいない。隣には読書をする男性。テーブルにはガラスの花器にバラや葉物などのアレンジメント。そういえば、パリでは少しだけ花屋にお邪魔させてもらった。

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