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14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ビリヤードとダーツ。
290/320

290話

 自慢ではないが、自分の立ち位置というのはこの店ではおそらく『普通』なのだろう。どれかに特化しているわけでもなく、ある程度にある程度をこなすことができる。器用貧乏みたいな。アニーのような特殊なものもなく、ユリアーネのような行動力もない。言ってしまえば、店長の下位互換、みたいな。


 ようやく本題に切り込める、とダーシャ。


「簡単に言えば、味付けを紅茶にするかコーヒーにするか。迷ってるわけで」


 この店といえばこの二つ。本物の店長とオーナーが鎬を削って売り上げを狙う。ドイツといえばコーヒーだが、紅茶も少しずつは勢力を拡大中。両方いっぺんに出すか、それともひとつずつにするか。意見を取り入れていこうという構え。


 〈ヴァルト〉では、一年後にもし紅茶の売り上げが勝っていたら、それをメインとしたお店に変わるとのこと。コーヒーならそのまま。未成年の二人が勝手に決めた。面白そうだからそれに大人が乗っかっている状態。


 しかしカッチャにとってその問答は、どうやら賃金には入っていないらしい。やる気もない。


「はぁー? 両方すれば? そうすれば納得するんじゃない?」


 クリスマスマーケットの今は、観光客含め財布の紐が緩くなる。紅茶党の人もいつもより多くベルリンにいるかもしれない。なら、この機会をどっちが先とか言って譲ってる場合でもないのでは、と思う。


「まぁ、そうなんだろうけど」


 なんともはっきりしない口調であることはダーシャもわかっている。ちょっとだけ目線は上へ。


 その様子をカッチャは見逃さない。なにか言いづらいことでもあるのだろう。予想。してみる。以前、二人の間であったこと。


「まーたケンカでもしてんの? どうせしょうもない理由なんでしょ」


 あの時はやたらとアニーがユリアーネに対して執着していて。まぁ、同じような志のライバルであり親友、だから仕方ないっちゃないけども。自分が間に入って仲裁した過去。


 しかしあれはなんだったんだろう、と今でも考えることがある。

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