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14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ビリヤードとダーツ。
283/320

283話

 相手が唖然としているにも関わらず、少女は気にせず続ける。


「そうだね、学校……大学に向けての勉強をしたいから、この店を辞めようかと考えている。でもとても居心地がいいから、さてどうしようか。こんな日は酒でも飲まなきゃやってられない」


 っていうのはどうかな? そんなストーリー。


 店内、他の客。カップをソーサーに置く音。雑誌のめくる音。様々な音。それがカッチャの耳に残る。


「……なにが?」


「なにを飲もうか。テキーラでもガッといきたいけど、まだ仕事中。あまり強くなく、それでいてキリッとしたものよりかは、包み込まれるような甘い、ショコラーデのようなお酒なんかいいかも。ここはカフェだ、となるとコーヒーのカクテルなんかいいんじゃないかな」


 ひとつ話が進んでしまうと、どんどんとそこから派生して物語が先へ。水を得た魚の泳ぎのように。スイスイと。大海へと広がりを見せていく。


「……注文は?」


 心臓が。嫌な速度。なんだ、この子は。とりあえずカッチャは、楽しんでいるところをぶった切って役割を全うする。ここはカフェ。ヴァルト。安らぎの場所。目の奥が。痛い。


 自分の世界に浸っていた少女だったが、ここでようやく目を合わせる。そして候補をあげる。


「となるとアイリッシュ・コーヒー、エスプレッソ・マティーニ……」


「……」


 ピキピキ、とカッチャの表情が痙攣。笑顔のような怒りのような。なんといえばいいか自分でもわからない感情。なに? なにかのドッキリ? テッテレー、とか言いながらパネルを持った誰かが乱入してくる?


 その微妙な揺れ。口にした二つはハズレている。そう少女は確信。ならば。


「いや、クイーンズ・ガーター……かな。間違いないね。僕にも頼むよ」


 これが自分の出した答え。クリームの美味しいコーヒー。うん、中々いいかも。アルコールも適当だ。

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