282話
なに言ってんだか。そんな冷めた口調でビロルは完全に否定。
「聞かねーよ。俺の手間が増えるだけだ。自分でなんとかしろ。アニーだけで充分てんてこ舞いなんだよこっちは」
真の店長が場をかき乱す。なんということ。これ以上追加されても、時給も変わらんのにやってられるか。一応は自分も大学生なわけで。比較的自由とは言っても、やらなきゃいけないことも多いわけで。
感情は揺れない。そういうヤツだとカッチャも知っているから。店長以外だと、こいつが一番腹を割って話せる。
「あんたってそういうとこあるわよね」
「あ?」
「感謝してんのよ、一応」
苦々しく「そいつはどーも」とビロルは謝辞を述べる。感謝はいらんから、手間を減らしてほしい。
ふぅ、とひと息つく。ほんの少し、苦くて重いものが空中に消えていく気がしたカッチャ。なにか解決したか、と言われればなにもだが、クライミング中に足場を見つけて休めたような。「さて、頑張るか」と気を入れ直すくらいには。
「それじゃよろしく。注文とってくるわ」
帰ってきた時にはクイーンズ・ガーターが出来上がっていると信じて。それを飲んで。アルコールの力を借りて。そんで仕切り直し。
「こんにちは。注文は?」
こんばんは、だったかな? なんて曖昧な時間帯。どちらでもいいか。入り口の近く、カッチャが注文の決まっていそうな人物に声をかける。女の子。というかこの制服。
メニューを閉じたその少女は、頬杖をついて——
「ふむ……なにか悩んでいそうだね。酒でも飲んで乗り切ろう、みたいな。そんな感じ?」
まず、観察から入った。口元には悪そうな笑み。頭の先から足の先まで、得られる情報を全て余すことなく。
注文を記そうとメモの準備をしたカッチャの手が止まる。
「……は?」




