271話
ちなみにこの場合の『店長』というのはアニーではなく、年長者であるダーシャ・ガルトナーのこと。こっちのほうが店長っぽいから店長と呼ぶ。ややこしいが本人達も納得している。というか元々、あの人が店長だったし。彼がアニーを店長として推したわけで。今に至る。
とはいえ、予想を大きく外してくるあたりがアニーっぽい、とウルスラも受け入れる。「そこ?」みたいなものを選ぶあたり。あの子らしい。
「まぁ……いいんじゃないでしょうか」
だからこそ。この話題を振ったのは間違いだったかも。
「ウルスラちゃんはなんだったの? エッフェル塔グッズとか?」
きっと帰るギリギリになって駅近くで適当に選んだんだろう、とビロルは予想した。店員さんに「オススメのもの教えてほしいっス!」とか言って。塩ならスーパーとか。というかこれは店で使う用なのか? 聞いてなかった。
少々モゴモゴと、はっきりしない口調でウルスラは目線もズラした。
「……ショコラーデ……」
ちょっと苦めの。でも仕事終わりに食べるとすごくちょうどいい味わいの。やっぱりアニーは食べ物のチョイスがいい。
塩とショコラーデ。なにかの味を整える塩と、そのままいただけるショコラーデ。うん、とビロルは頷く。
「いいねぇ。俺もどっちかといえばそっちがよかったよ」
「……と」
「と?」
申し訳なさそうなウルスラ。そしてなんだか羨ましいような展開がこのあと来そうな、そんな前兆を察知したビロル。顔だけ前に出る。
指を曲げてウルスラは確認しながら思い出す。
「ボディクリームと、ペーパーオルゴールと、スノードーム……とか」
まだまだあった。なので『塩』とだけ答えられると、なんだか自分が悪いことをしたようで。いや、アニーのせいなんだけど。せい、っていうのもおかしいけど。買ってきてくれただけなんだけども。居心地の悪さが増してきた。逃げようか。




