表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
264/319

264話

 なんだか彼女らしくて、納得しつつもその天然加減はユリアーネを照らしてくれる。


「なんですかそれ」


 きっとベルリン戻っても、ようやく慣れてき始めたパリの天気を見てしまうのだろう。毎朝確認してあげなければ。気温差を間違えたら風邪をひいてしまう。


 そのままベッドに二人腰掛けつつ、この時間を楽しむ。とはいえ夜も深まりつつある。欠伸をどちらからともなくしたり、うとうとと船を漕ぐ。


 少しずつ、さらにゆっくりと香りが室内に大きく広がるにつれ、我慢ができなくなってきたアニー。机の上の三色の缶から、眠そうな目が離せない。


「寝る間に一杯どうっスか。ボクは白にしようかと」


 寄りかかるユリアーネに優しく声をかける。全ての行動がまるで水の中にいるような、宇宙空間にいるような、時間の流れが遅く、ずっと続く気がする。続いてほしい。もしこの時をタイムカプセルに閉じ込めておくことができれば、また味わえるのに。


「? ユリアーネさん?」


 ずっしりと全体重をかけるかのように、隣から崩れてくる。小さな寝息をたて、ユリアーネはアニーに寄りかかる。


「寝てるっス」


 働いてきたことと、自分とは違いしっかりと授業を受けている事。時間も時間。紅茶のいい香り。炎のゆらめき。寝る条件は揃っていた。


「仕方ないっスねぇ」


 そう言いながらもアニーは笑んで、寝ているユリアーネを横にする。本来であれば自分が下のベッドなのだが、今日は上で。その前に紅茶。いただいてから。コンパニー・コロニアルの紅茶を前にして我慢なんて、そんなの無理に決まっている。


「ユリアーネさんが悪いんスよー、寝ちゃうから。開けちゃいますねー」


 プレゼントしたものだが、まぁ、後日怒られることはないだろう。たぶん。気分は白。ホワイト・グリーンティー。缶を持ってキッチンへ。行こうとしたその時。


「——」


 自分の名前を呼ばれた気がした。起きたのだろうか。確認すると、やはりそのまま寝ている。ただの寝言。


「なんだ、ユリアーネさんも飲みたくなったのかと思ったっス」


 まだ出会ってそんなに経っていないけど。きっと。これからも。


「……おやすみなさいっス、ユリアーネさん。明日も頑張りましょう」


 明日も。来週も。来年も。その先も。


 これからもずっと一緒にと願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ