255話
紅茶党では有名なブランドではあるが、そうでなければあまり海外展開していないこともあって、知らない人も多い。これを目当てのひとつにしていたアニーの声色が明るくなる。
「ここはフランスで最古の紅茶ブランドなんです。茶葉に凍った香りを混ぜ込むという特殊な製法により、他ではない味わいがあります。そしてノエルっぽいところもありますし、こちらが一番かと」
時季にも合わせて。それぞれ味にブラックティーやグリーンティーなど違いがあるため、見ても味わっても楽しい逸品。
飲み終わっても、缶は別に使い道もありそうだし、なにより可愛らしい。これにシシーも満足している。
「これは喜ばれそうだ。ありがとう、でもなんでこれが俺に合っていると?」
たしかに見た目からしても間違いない物ではあるが。自身がその人物に対して抱いているイメージがこのコンパニー・コロニアル。そしてこの配色は……さて、説明をお願いしたい。
吃りながらもアニーは、チラッとシシーの顔色を窺う。
「……その方に対してシシーさんとその人の関係性。それが三種類ある、そんな気がしたんス。『友人』『家族』、それと『恋人』」
ふふっ、と笑声を漏らしながらシシーは頷くしかない。
「なるほど。ならたしかに三種類あるのも納得だ。これがいい。買おう。これは今日のお礼にね」
そして「アニエルカさんのぶんも」と二つ手にする。欲しそうにしていたから。感謝の言葉だけじゃ足りないだろうし。
魂の抜けたようなアニーの脱力感。驚きが重力に負ける。
「……ありがとうございます。シシーさんに付き合ってる人がいたってのがびっくりしました。孤高の一匹狼感があったっスから」
ということはキス以上のことも。そう考えると顔から火が出そう。休日とかどういう風に過ごしてるのか聞いてみたい気もする。
「俺だってそれをする権利くらいあるだろう。別に隠しているわけでもないんだがね。聞かれないだけで。それに俺の片想いかもしれない」
さらに謎を深めるシシー。学院の友人と出かけることもあるが、ある程度の線引きをしている。誰にも見せない素顔。だが、それは誰も引き出してくれないから。




