247話
「そう……でしょうかね……」
その自信満々が逆に作用しそうで。石橋を叩いて渡る心構えのユリアーネ。代わりに自分が慎重になっておく。
意気揚々としたアニーは、通り過ぎるパン屋やアンティークショップのウィンドウを眺めながら、じっくりと歩を進める。数歩、歩くたびに止まる。
「しかし香りを贈るとか、なんかオシャレっスよねぇ。ボクは香水とかあんまり使わないっスけど。ユリアーネさんもあんまりつけないですよね」
全ては紅茶の香りを楽しむため。余計なものはできるだけ使わない。
ヨーロッパでは水が硬水なことと湿度が低いこともあり、毎日髪を洗ったり、深夜は騒音の問題などもあって場合によっては毎日シャワーを浴びない、という人も多い。そのため、香水は誤魔化すためにも使われたりするのが一般的。
その点について、ここ最近のユリアーネは心変わりしてきたことが関係している。それは瞳に映る人物。
「以前はつけていましたし好きですが、飲食で働いていることもあって控えるようにしています。それに——」
「? なんですか?」
美少女に見つめられて赤らむアニー。いやー、恥ずかし。
なにを考えているやら……呆れながらユリアーネはつけない理由を明かす。
「アニーさんにはあまり強い香りだと申し訳ないですから。嘘はつきたくないです」
一緒にいることも多い。どちらかの家に泊まるときは同じベッド。そういった経緯もあり、知り合ってからは基本はつけないようにしている。
そのことを今初めて知り、ポカンと口を開けて時の止まるアニー。が、すぐにニヤニヤと笑む。
「やっぱユリアーネさんっスよねぇ」
その意味はユリアーネにはよくわからない。が、なんとなくは伝わる。気がする。
「しかし、紅茶の香りとなると香水とかでしょうか。たしかありましたよね、いくつか」
事実、ダージリンやアールグレイといった紅茶でも定番のものから、珍しいものだとチャイなど、万人受けするとして人気のある香り。スパイシーさや、甘さ、フルーツ感のあるものまで揃っているので、馴染みのあるものを選ぶ人も多い。




