表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
226/320

226話

「それで。パリへは遊びに来たのか? 留学はGPAの上位しか許可されないはずだ。優秀なものだ」


 追求されすぎるのはベアトリスは好きではない。それがお客であっても。逆にこちらから話を振る。自分のことはこれでおしまい。


 これはなにかあるね。というところまではたどり着いたリディアだが、深く探ることはしない。素直に従う。


「そりゃ観光も兼ねて。一度パリには来たんだけどね。いいね、ここは。胡散臭さが街全体に渦巻いているようで」


 褒めているような貶しているような。だが、ベルリンとは違う興奮がある。それがどうしようもなく心地良い。あぁ、でもベルリンの危険な香りも好きだ。さてさて。


 自分の弟よりもほんの少しだけ上の年齢の少女。どうやったらこんなものが出来上がるんだ。それを訝しみながらもベアトリスは会話を進める。


「そっちもな。あの子の前でも本性を表したらどうだ?」


 なにか隠している、気がする。数分前に出会ったばかりの自分はともかく、彼女やそのまわりの人間にも言っていないなにか。余計なお世話、と言われたらそれまでだが。


 ふふっ、とリディアの天使のような悪魔の笑顔。


「そりゃお互い様。ベアトリスは私とは少し違って、最終的なところを誰にも言っていない、って感じだね。私は一個丸ごと隠してて。そっちはほんの少しだけ軌道を変えるだけで、行き着く先を誤った方向に操作しているような。いいね、そういうの」


「お待たせしました。どうぞ」


 そこに香ばしい香りを携えたユリアーネの登場。一度戻って三杯ぶん用意完了。それではいただきましょう。


 背もたれに寄りかかり、つまらなそうに目を細めるベアトリス。対して、頬杖をついて楽しそうに見上げるリディア。空気が重い……理由もわからずユリアーネは「?」と首を傾げて座る。


 警戒を解き、コーヒーのカップに顔を近づけるリディア。まずは香りから。うん、いい香り。


「ありがと。エスプレッソは解凍したほうがいいって話をしてたんだけど、それって本当?」


 最初の質問の話。せっかくだから聞いてみよう。もし違ったらどうしよう? 恥をかかせるのは申し訳ないなぁ。


「好みがあるので一概には言えませんが〈ヴァルト〉では、エスプレッソ用の場合一時間ほど解凍させてから使用しています。温度が下がってしまいますので」


 なので最初、解凍された豆を渡された時にユリアーネは親近感のようなものを感じた。同じようにできる、と。それだけで心が踊るのだから、自分は単純だ、と判断できている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ