224話
「そんなわけないだろう。これが二人へのアレンジメントだ。私を含め三つある。ちょうどよかったな」
ドイツではプリンはクリーム状のものが多いんだったか。クリーム……それもいいな、と別のことに思考を割くベアトリスは、自分のぶんを持ってテーブルへ。
どうすればいいかわからず、とりあえずユリアーネも戻ってイスに座る。少し放心状態。花? アレンジメント? これが? いや、たしかに桜は入っているけど。これが『元気の出る』アレンジメント……どういう……?
「……食べてしまっていいのでしょうか。少し抵抗はありますが……」
ゼリーとプリン、ということは食べるものだし、食べていいと言われた。スプーンもある。じゃあ早速、というふうにはなぜかなれない。なんか……思っていたのと違う。美味しそうではあるけど。
テーブルにグラスを置いたベアトリス。自身は座らずに、さらに店奥へ引っ込もうとする。
「かまわん。ここは私の店だ。私がルールだからな」
まだ自分もよく把握できていないけど。それならそれで、とリディアの楽しみは増すばかり。
「ま、そういうことなら。ありがたくもらっちゃおうか。初めてだね、桜を食べるのは」
さてさて。あとで説明をもらうとして。中々興味深い。シシーならこの謎を解説なしで解けるのかな?
「コーヒーも淹れる。エスプレッソでいいな」
すぐに淹れられるから。ドリップもベアトリスは好きなのだが、今はエスプレッソの気分。時間をかけずにさっと飲みたい。
という提案を耳にしたところで、機敏にユリアーネは反応する。
「でしたら私が。一応、お店では専門でやらせていただいています」
色々な戸惑いはある。だが、コーヒーを淹れている時間は至福。彼女にとっては一旦休憩、という感覚。それに自分達がお客とはいえ、なんだか体を動かしたい。
ピタッと足を止め、振り返るベアトリス。
「お店?」
なんだか先ほどまでの疑問が繋がりそう。そんな手がかり。なんというか、ただ買い物に来たわけではなさそうな。店全体を見られているような。そういった雰囲気を感じ取っていた。
その説明を買って出るリディア。なぜか誇らしげ。
「この子はね。ベルリンのカフェのオーナーだからね。コーヒーを淹れるのは得意なんだ」
飲んだことはないけど。きっとそう。たぶん。だってほら、こんな純粋だし。
「あまりハードルを上げないでください」
そう伝えるとユリアーネは立ち上がる。グラスの中身も気になるが、それよりも一度場を整えたい。いきなり来たお客が使っていいなら、だが。




