209話
たしかにそれも面白そう。考えつかなかった自分を責めつつもアニーは自論を展開してみる。
「たぶん、あちらの方のほうが表現豊かだと思います。ボクの場合はほら、なんとなくの曖昧な感じですし。紅茶の香りのクラシック、ってどんなのか気になるっスねぇ」
手を合わせて、紅茶を楽しみながら優雅な曲を満喫する時間を夢見てみる。ベートーヴェンとかブラームスとかしか知らないけど。曲も知らないので鼻歌で適当に。
やはりこの人といると空間が和んで、キラキラと輝く。ユリアーネもその妄想に乗っかってみる。
「そちらもきっと、クラシック曲を紅茶で表現したらどうなるか、とか考えていると思いますよ。ついでにお茶菓子も」
だとしたら、もう友達ということでいいだろう。アニーのとってこっちに来てよかったと言える最初の出来事かもしれない。
「いやー、学校も楽しくなりそうですね。ボクも一杯飲みます」
気分が高まったら紅茶。これ自然なこと。
「なら、せっかくですから、私がコーヒーを淹れます。紅茶をいただいちゃいましたし」
なんだか体を動かしたくなったユリアーネ。動かすといっても些細なことだが、淹れてもらったお返しに。
いつもなら紅茶だったが、知り合って以来少しずつコーヒーにも挑戦しているアニーは、ぜひとお願いする。
「ホントっスか? 甘いのがいいっスねぇ、朝ですし」
蕩けるような。それくらいでも今なら飲めそう。
朝なら苦味では? という問いはなんの意味もなさないことは、ユリアーネはわかっている。甘いコーヒー。となると、ひとつ候補が。
「ではフランス、ということでベトナムコーヒーを淹れてみましょうか。砂糖とはまた違った甘さで、これはこれで私は好きです」
うん、とひとり納得して頷く。じっくりと作り出す、その過程も楽しめる種類。
その様に、じっと疑いの目を向けるアニー。
「……ベトナムなのにフランス、っスか? でも聞いたことあるっス。たしか練乳を使うとか」
つまり甘ーいものに仕上がると。それは楽しみ。待ってました。
やはりちょっとずつではあるが、アニーがコーヒーの知識を深めていることが嬉しいユリアーネは、自然と心が弾む。
「そうですね。そしてコーヒー豆もロブスタ種を基本的に使います。大量生産の低価格、というイメージを持つ人も多い品種ですが、逆にこれがあったからこそ生まれた部分もあるかもしれません」
コーヒーというものはどこに進化の余地が残されているかわからない。そこが魅力的。




