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188話

 こんな問い方をされた時、ビロルとしては返してみたかった返答がある。


「『貴様は今までに食ったパンの枚数を覚えているのか?』」


「なにごと?」


 いや、ないけど。否定しつつも突然思っても見なかった角度から返され、ダーシャは困惑。パン?


 はぁ、とわかりやすい落胆のため息をつくビロル。


「有名な漫画のセリフです。いつか使ってみたいと思ってました」


 そのまま石仮面でも被って叫び出しそうな様子を確認しながら、落ち着いてダーシャは処理。


「少なくとも一応上司に言うべきじゃないとは思うけど」


 こういうところは個性として捉えていいのか悩ましい。少なくとも自分が彼らくらいの年齢の時はダメだった。柔軟さが求められる現代ではどっちか。


 アニーがないことで鎖を解かれたビロルは、いつにも増してのびのびと羽を伸ばす。


「上司ったって、店長もポジションで言ったら俺達と一緒じゃないですか。ほんのちょっと上なだけで」


「じゃあ一緒じゃないじゃん。あー、あいつがいないとあんたの頭のネジも外れるわけね。めんどくさ」


 そこに加わるのは、アルバイト店員であるカッチャ・トラントフ。アニーやユリアーネよりも年上のお姉さんの位置に当たる。周りからはいじられ気味のダーシャに代わり、ある程度強引に仕切る胆力も持ち合わせている。


 ドイツに限った話ではないが、ヨーロッパはあまり年齢というものを重要視しない。というのも、学校や幼稚園に入学する年齢も親の裁量に任されているため、一歳二歳違うのもよくあること。


 そのため、年上や年下という感覚はあまりなく、その人物の実力であったり人となりでポジションは決まってくるところが多い。こういった経緯もあり、彼女は時にこの店において一番の権力を持ったりする。


「……あのー、さらにお客さんが増えてきましたので……」


 そんな嵐が吹き荒れている場所に足を踏み入れたのは、最も日の浅いウルスラ・アウアースバルト。ケーニギンクローネ女学院に通う一六歳。弱気ながらも行動力はあるほう。あとトランプゲームとか好き。


 こうしている間にもお客が入店し、空いている席につきだす。まずはこの場を乗り切ること。最初にこの店員間の緩んだ空気を引き締めるカッチャ。


「あー、ごめんごめん。すぐ行くわ。ほら。あんた達も」


 男二人の肩を叩いて送り出す。ここの男達はまともな人間はいない、と半ば諦めている。今はいないがオリバーも、テーブルウェアを愛しすぎる奇人。


「でも……二人がいないと大変ですね」


「アニーはともかく、ユリアーネちゃんがいないと寂しいね。でもウルスラちゃんがいれば俺は——」


「早く戻れ」


「まぁまぁ」


 そんなやりとりをこなしながらも。テンペルホーフ=シェーネベルク区の〈森〉は今日も人々に癒しの時間を提供していく。

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