表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/320

185話

 そして、ユンヨンチャーではなくチャムを提供した経緯を、ユリアーネは語り始める。


「……呼び方が変わっても、元気づけてくれるのは変わりませんから。甘いものを飲んで、苦しさや辛さを中和していただけたら」


 それだけの力がコーヒーや紅茶にはある、と信じている。カフェ文化が根付くドイツ。この時間は、ぜひとも大切なものとして続けていきたい。


 コルタード、そしてチャム。甘く、苦く、そして甘い。ララは心に刻んだ言葉を思い出す。


「『自ら苦しむか、もしくは他人を苦しませるか。そうでなければ、恋愛というものは存在しえない』。フランスの作家、アンリ・ド・レニエの言葉よ。もし苦しんでいるのなら、それは恋をしているということ。苦しさだけが、恋を教えてくれるの」


 目の前の可愛い少女にアドバイスを送る。苦しさは必要なもの。そして自分も奮い立たせる。強くなる必要はないのかもしれない。弱いまま、辛くなったらここに逃げるだけ。


 たぶん、自分の力などなくても、この方は進むことはできたんじゃないか、とユリアーネの心は曇る。むしろ、変なアイディアを付け足してしまったような。苛まれる。


「……申し訳ありません、もしかしたら出過ぎた真似をしてしまったかもしれません……」


 だが、ララは心から感謝している。初めて飲んだコーヒーと紅茶。それに勇気付けられたこと。


「逆よ、逆。ずっと辛いなんて私、耐えられないから。だから時々、ここに来て甘さを持って帰るわ。次は練乳入りで。まだしばらく振り向いてくれなさそうだから、ヤケ飲みよ」


 そう、あの子をきっと。私なしでは生きられないくらい依存させてみせる。少し邪気も纏う。


 その背後に黒いオーラのようなものが見えた気がして、ユリアーネは一歩後ろへ。


「お、お待ちしております……」


 そして目を光らせ、ララは立ち上がってユリアーネとの距離を縮める。


「あ、そうだ。一緒に撮るの忘れてたわね」


 まだ撮るのか……と、生気のない顔つきでユリアーネが、ララと並ぶ。と、瞼に温かい感触。そこにパシャリ。


「……ヒッ!」


 突然の口づけに硬直する。背筋がゾクっとした。が、嬉しさもなぜかある。なんで?


 額が触れ合いそうな距離で、妖艶な笑みを浮かべるララ。そのリアクションも心にしまう。


「瞼はかなり人によって感じやすいのよ。ユリアーネさんはそうみたいね」


「……普通こうなりますよ……!」


 まだ心臓がドキドキする。綺麗だ。ただただユリアーネはそんな感想しかでてこない。でも瞼か、もしアニーさんにするとしたら、まずここから……? と、正常ではない脳でシミュレーションした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ