182話
「……やっぱりやめましょうか……」
覚悟が決まらない。決めたつもりが決まらない。でもこうしている間は、ララを待たせていることになる。早く行かねば。
「……恥ずかしい、です、けど」
きっと彼女の影響力があれば、かなりいい宣伝になるはず。恥ずかしいとか言っている場合ではない。これはオーナーとして、売上のためにやっているわけで、と自分自身に催眠術をかける。よし。いける。
そしてバックルームからホールへ戻ってきたユリアーネを見かけたダーシャは、トラブルでも起きたのだろうかと思い声をかける。
「どうしたの? なにかあった——」
と言いかけたところで、声を失い、「え? え?」と狼狽するのみ。
それを尻目に、少し気にしながらも、ユリアーネは深呼吸を多めに繰り返してララの元へ歩く。一歩歩くごとに緊張が高まる。汗が噴き出る。足が震える。
「……お待たせしました」
そう、声をかけられたララは、顔を上げた。
「……え?」
そこにいたのは当然ユリアーネ。なのだが。
「……それ、ディアンドル?」
先ほどまでのシックな制服とは違い、赤いボディスや、花柄のロングスカートと黒いエプロン。そしてピンクの紐。いわゆる、ドイツの伝統衣装ディアンドルに身を包んだ少女。
「……どうせ写るなら、お店の宣伝になるように……大丈夫でしょうか……?」
言ったものの、やっぱりやめようかという気持ちが再燃してきたユリアーネ。恥ずかしいものは恥ずかしい。間接照明のおかげでわかりづらいが、みるみる全身が赤らんでいく。
「……」
衝撃を受け流しきれないララは、少しずつ体がソファーに沈んでいく。脳が処理しきれない。が、少しずつ追いついてきたところで、ガバッと震えるユリアーネの両手を握った。
「…………イイッ!」
「え?」
ものすごい速さで接近するララから逃れることができず、今度はユリアーネがうろたえる。
が、そんなことはおかまいなしに、機敏な動きのララは携帯を構えだす。
「すごくいい! ちょっと撮らせてッ!」
「え? え?」
ユリアーネはされるがまま、撮影会が始まった。
様々な角度からポーズをもらうララ。「こっち見て」「上目遣いで!」「恥じらいを持って!」など、多岐にわたる指示。
「あの、これは一体——」
「いいから、はい、指を咥えて」
と、さらに過激に続行するララ。まわりの客達も、にわかにざわつき始めたところで、視線を感じ一旦終了。
「ちょっと待ってね」
自身の欲望にまみれたファイルが出来上がる。「ヒヒッ」と怪しげな笑いを浮かべながら。




