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163話

「……いやね、アニエルカさんのことが『怖い』のかな、って思って」


 意外な感想をシシーは吐露する。はたから見れば、お互いの家に泊まるような仲のいい友人。むしろそれより距離が近い、まるで恋人のような。そこまで詳しいことは知らないので、言の葉から断片的に浮かび上がるオーラを拾い集めた結果。


 慌ててユリアーネは否定する。


「……! いや、そう……思った時期もありましたけど、一番に心の許せる親友です。怖くはありません」


 怖く『は』。ならそれ以外に、他に感情は? 無意識になにか、自分でもわからないなにかが隠れている? 言ってから気づき、まるで丸裸にされているようで、背中に冷や汗が流れる。


 狼狽するユリアーネに、あえて気づかないようにシシーは振る舞う。


「そっか。俺の思い過ごしか。ならよかった。脅かせてすまないね。ちょっと待っててくれるかい? 飲み物を買ってくるよ」


 そう告げて立ち上がり、カフェのレジへ向かっていく。その際にも、下級生達から声をかけられるが、ひとつひとつ丁寧に対応。


 取り残されたユリアーネは、緊張を緩めるタイミングがきたことで、少しだけ冷静さを取り戻す。


「……」


 なにかお詫びに一杯、ということだろうか。そんな、それほどのことを自分はできていないのに。申し訳ない。ちゃんと、あの方を満足させられているだろうか。全てにおいて自信などないが、一緒に会話をしていて、苦痛を感じていないだろうか。顔色ばかり窺ってしまう。


「美しく、聡明で、少し意地悪。人間味のある方、なのかもしれません」


 そこも魅力……なのだろう。現に、悪い気はしない。強いカリスマ性と、ふとした時の気遣い。私には……ないもの。


 数分後、ドリンク入りの透明なカップを持ったシシーが戻ってくる。それを静かにユリアーネの前へ。


「お待たせ。特別に作らせてもらった。どうぞ」


 レシピを伝えたら戸惑っていたので、自分で作ってみてもいいか聞いたら、許可が出てしまった。ゆえに手作り。


 いつの間にか時間が経っていたことにユリアーネは驚きつつ、声に反応して咄嗟に受け取る。


「……ありがとう、ございます。これは……」


 受け取ってから気づく。カップの中で四層に分かれた、プースカフェスタイルのドリンク。下から黄色、白、モカ、そしてフォームドミルクの白。


 飲むのが躊躇われるほど美しいそのドリンク。シシーは意図を伝える。


「今のキミに必要なコーヒーを作ってみた。味はまぁ、お店ほどの味は出せないだろうけど」


 イスに座り、表情を窺う。驚いたところを拝見。満足。

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