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151話

 その言葉の意味がわからず、クルトは固まってしまう。


「……え? 今、私は質問されてるんですか?」


 あれ? 自分が質問している側だったような? なんで聞かれる側に?


 テーブルに両手をつき、前のめりになりながらアニーは教えを請う。


「そうっス。もしもっといい感じにできそうであれば、お店のメニューにしたいので。どうっスか!?」


 グイグイとさらに切り込む。恥などはない。使える手段は全て。使わずに納得がいかないものを作り出すくらいなら。


 とはいえ、ウルスラにとってはなにが起きているのか理解できない。いきなり話を振られるし、気づいたら改良案を聞き出そうとしているし。


「……自由すぎない?」


 顔が引き攣るが、いつもこんな感じなのだろうか。胃が痛くなってきた。


「え、でもこんなチャンスそうそうないですし。なんだったら、お店の商品全てにアドバイスもらいたいくらいっスよ」


 店を良くするためなら、お客さんであっても、いや、だからこそ意見をもらうアニー。それがショコラティエとか最高、としか考えていない。


「なるほど。この紅茶とクッキーは、たしかにお前さんに一番合ってるかもね。お互いに聞きたいことが一緒だったわけだ」


「? どういうことっスか?」


 マクシミリアンが意味深なことを発言したため、腑に落ちないながらもアニーはこの場にいる全員の顔を見る。


 言おうかどうか悩みつつも、意を決してクルトは口を開く。


「『クルト・シェーネマン ショコラーデハウズ』というショコラトリーをご存知ですか?」


 唇が乾く。先ほど紅茶を飲んだばかりだが、緊張していることを悟った。なにかが動き出そうとしていることが、自分の中でこれほど勇気のいるものだったのか。


 脳内を二周ほど巡ってみたが、聞いたことのない名前にアニーは唇を尖らせる。


「いや、知らないっス。有名なんスか?」


 一番近くにいるウルスラを覗き込む。紅茶に関すること以外は、てんで無知。イギリスの紅茶専門店などなら全部言えるのに。


「有名だよ、聞いたこともない? クルト・シェーネマンって言ったら——」


 と訴えかけたところで、ウルスラはハッとする。


 ちょっと、待って……あれ? さっき、アニーさんがこちらの男性を呼ぶ時、クルトさん、て。しかも超一流のショコラティエって。ということは……


 つまり?


 佇まいを直し、僭越ながら、とクルトは自己紹介をする。

 

「一応、私です。クルト・シェーネマンと申します。まだ若輩者ですが」


 隠すつもりもなかったが、なんとなくこんなことに。これなら最初から伝えればよかった、と反省。まわりくどいやり方などせずに、この少女のように素直になればよかった。

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