150話
案の定、責め立てられるようになったウルスラは混乱して、目が泳ぎに泳ぐ。
「それは……」
なにか言葉を出そうとするのだが、変なことを言ってしまいそうで、声が消えて口をパクパクさせるのみ。そもそも食べてもいないし、なんのことなのかさっぱりわからない。
(……いや、どういうこと!? そんな打ち合わせもしてないし、作ったのも私じゃないし! なんでいきなりこっちにパスしたの!?)
だが、なにか喋らなければ。焦りだけが募っていく。
「……それは……」
「それは?」
マクシミリアンも楽しみに言葉を待っている。
「……」
沈黙。だが、もうどうにでもなれ、とウルスラは思いの全てを吐き出す。
「……きっと、お客様にもっとショコラーデについて、興味を持ってほしかった、んだと思います……なんとなく、ですが、もっとショコラーデの世界は深いんだ、って……いや、わかんないですけど……」
なにも考えていない。それっぽいことを言ってみているだけ。そのまま続ける。
「……ショコラーデって、もっとワクワクするものなんです。食べる前から味の予想をしたり、食べてみたら思ったのと違ったりして、友達と交換してみたり。なんていうか、その……」
結局どういうこと? 自分でもわからない。きっと「なにを言っているんだろう、こいつは」というような目線で見られているに違いない。汗が吹き出し、顔が赤くなるのを感じる。
だが、その必死さだけは伝わった。マクシミリアンが上手く拾い上げてまとめる。
「ショコラーデの世界は深いってさ。たしかに、ラクリスショコラーデなんて、そりゃ予想できないから、聞くしかないよねぇ。会話のきっかけに最適だ」
そして、この紅茶とクッキーのセットについて、アニーが見解を示す。
「それにショコラティエ、それも超一流の方には、普通のショコラーデでは退屈かと思ったんス。なので、困らせてみようと思いました」
恥ずかしそうにはにかみつつ、照れ笑いする。満足させることができないのなら、いっそ複雑にしてしまえ。そう考えた。
多少の驚きはありつつも、クルトは柔和な表情になる。
「……気づいていらしたんですね。でも、あえてショコラーデで勝負したのにはなにか理由が? 相手がショコラティエならば、むしろ避けたほうがいいのでは?」
相手の土俵で勝負する必要性を問うた。より高いレベルを求められるがゆえ、自分であれば避けたいところ。あえてそれで挑む理由はなんなのだろうか。
それに対して、アニーは意外な答えを用意していた。
「……フィンランドには、こんなことわざがあるんス。『聞く者は迷子にならない』。わからないことは聞く。せっかくショコラティエの方がいるんですから、聞きたいんです。もし改良するなら、どうすべきだと思いますか?」
目の前に一流のショコラティエがいる。なら、食べてもらって感想と改善点を教えてほしい。




