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147話

 大きな目をアニーは丸くする。


「なにがっスか? なにも問題ないっスよ。ささ、どうぞ」


「なにやら隠していることがありそうだね。どれどれ」


 聞きたいことはまだまだマクシミリアンは持ち合わせてはいるが、まず食べてから。七枚あるうちのどれにしようか悩んでいるが、全部一緒。諦めて適当に。


 アニーは両手を振って否定する。


「そんなそんな。いつもマクシミリアンさんにはお世話になってますから。感謝の気持ちっスよ」


 勘繰りすぎっス、と場を治めた。だが、奥底では悪どい笑みをこぼさないよう、慎重に表情を作っている。


 なにか引っ掛かるところを感じながらも、恐る恐るクルトはクッキーを口に運ぶ。


「ではひとつ」


 ひとつ、深呼吸をしてから。歯先に集中する。噛んだ瞬間、ホロッとクッキーが崩れる。そして中のクリームと混ざり合い、下の上で転がす。すると、あまり感じたことのない、なんとも言えない味と、それと。


「……これは……塩……辛い……?」


「え? あたしのは甘いけど、でもなんかこう、不思議な味」


 一気に頬張るマクシミリアン。甘さの、その先になにかある。砂糖のような甘さではなく、なにか本来甘くないものから、無理やり甘さを引き出したような、妙な甘さ。


 そして似たような感想をクルトも抱く。こちらは塩辛さ。


「これはショコラーデ……ではありますけど、なんですか……薬のような……」


 一番近い表現は『薬』、だがどこかで食べたことがある。なんだ? 日常的にはないが、なにかで……。


 二人が答えが出せないでいる姿に喜びを感じるアニー。そそくさとポケットから、あるものを取り出す。


「正解はこれです、フィンランドやデンマークではお馴染みのお菓子である『ラクリス』です。みなさんも一度は食べたことあるんじゃないですか?」


 それはパッケージに入った、真っ黒なグミ。まるで炭のような、光さえも吸収してしまいそうなほどに、鈍い輝きを放つ。


 あっ、という声と共にクルトが口を開いた。


「ラクリス……ですか? いや、でもたしかに……!」


 合点が言った、という風に左手で口元を覆った。


 ラクリス。北欧ではポピュラーなお菓子。元はスペインカンゾウという甘草の根のエキスを使って作られた薬用のハーブだったが、それをグミやキャンディなどに使ってみたところ、強すぎるクセが逆にハマり、国民的なものとなった。


 国民的である一方で『世界一不味い』とも称されることのあるラクリス。良くも悪くもそのクセを受け入れることができるかどうか。ヨーロッパや北米でも、北欧ほどではないが、それなりに見ることはあるが、アジアでは評判は悪いらしい。

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