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143話

 提供したウルスラ、されたマクシミリアン両者が首を捻る。なんだろうか、これは。種のような、粒のような。


 言葉通りに種明かしに入るアニー。いい反応をしてくれて嬉しい。

 

「これっスか? これは——」


「『フィンガーライム』、本来なら魚や肉料理なんかで使用することが多い食材です。プチプチとした食感と、爽やかな酸味があとを引きます」


 そこは料理人であるクルトが、より詳しく説明する。自身は使ったことはない。収穫も難しく、欧米では需要もそこまでないため、中々普段使いには向かない高級食材。だが、値段も適当で、高級など関係なく使ってくるこのカフェ。本当に先が読めない。


 という裏の事実は置いておいて、そんなことは知らないマクシミリアンは、違和感を吐露する。


「……でも、これはライムというよりもどちらかというと——」


「山椒、の香りに近いですね。たしかに山椒はミカン科の香辛料。似ているわけです」


 豆知識も取り入れつつ、クルトはそのまま噛んでみる。美味しい、というよりも楽しい食感。アクセントはアクセントでしかないが、クセになるタイプ。そのまま食べるほうが好きという人も多いだろう。


「カラフルですけど……これも全部そうなの?」


 フィンガーライム、別名キャビアライムとも言うが、多くの種類が色で分けられている。主に赤系統は多く、クリムゾンやレッドシャンパンなど以外にも、イエローやグリーンといったペールな色も。綺麗で可愛い、そんな印象をウルスラは持った。


 立場は逆転してしまっているが、その問いにはクルトが答える。


「様々な色があります。ここには五種類ほどですが、もっと多いですよ。私も何種類あるのか見当がつかないほどに」


「……そう、なんですか。すみません……」


 本来なら、新人とはいえ賃金をもらっている以上、自分が答えなくてはいけない立場。少しウルスラは落ち込む。で、誰なんだろうこの男性? やたら詳しいけど。


 それとは対照的に、上機嫌にマクシミリアンはライムを使い倒す。


「これは美味しいね。そんでもって楽しい。紅茶の中に入れて潰しても、またちょっと味が違う。気に入ったよ」


 紅茶に追加するものとしてジャムなどもあるが、あちらよりも混ざりがいい。ライムと山椒のいいところを取ったような、今までにない舌の喜び方。


 まず、喜んでくれたところにアニーは安堵した。考えて、それが当たった瞬間は嬉しいし楽しい。次にはもっと、そんな風に前向きになれる。


「粉末だったり輪切りだったり色々ありますけど、ボクはこっちのほうがライムとしては好きっス。香りが花開く感じが一番強いっスから」


 粒を潰すまでは味も香りもしない。ゆえに、歯やスプーンなどで潰した瞬間が最高の鮮度。薄皮が剥がれて詰まった中身が溢れ出す。

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