135話
優しい言葉をかけられ、そこで肯定すればよかったのだが、せっかく用意してくれたものに注文をつけることはできず、ついウルスラは否定してしまう。
「あ、はい。大丈夫、です……たぶん」
絶対に小さいと思ったが、なんとかなってよかったとカッチャも安堵する。
「さっきすれ違ったのと、今ホールで働いてるのが同い年の……って知ってるんだっけ。ま、すぐ仲良くなれるでしょ」
というか、小さいって言われた場合はどうすればよかったんだろう。諦めて、って言えばよかったのかな。他に女性用あったっけ? 危なかった。
さっきホールで見かけた、小さくて元気のありそうな子。明るくて可愛いかった。思い出しながらウルスラは明るい未来を夢見る。
「だと嬉しいです。あまり友人とか多くないので、仲良くできたら」
もうひとりは知っている。ユリアーネ・クロイツァー。優等生で通っている。もし話せるとしたら、なにを話せばいいのだろうか。考えていなかった。
うん、いい感じの子でよかった、とカッチャも満足したところで最後の質問。
「まぁ、そこは大丈夫だろうと思ってるけど、なんか隠してることない?」
スカートを留めようとしていた手を止め、ウルスラは固まる。
「……はい? なにがでしょうか?」
唐突に、真に迫ったことを聞かれ、真意を掴めずに一度返した。隠し事? 今、隠し事をしているか聞かれている?
今、聞いてしまうのが吉とカッチャは判断した。もしあるなら、絆が深まってからよりも、今のうちに知っておいたほうがダメージは少ない。回避できない痛みなら、防御して減らすしかない。
「アニーにはさ、嘘は通じないんだよねぇ。もしあるなら今のうちに、このお姉さんにだけ言っておいたほうが、なにかしらフォローできるかもね」
ないならないに越したことはないし、話せないこともあるだろう。だから、話せる範囲で隠していることなら、今がその時。打ち明けてくれるなら真摯に受け止める。
半信半疑だが、声から伝わる真面目さにウルスラはどうリアクションすればいいのかわからない。
「どういう……?」
「あの子曰く、嘘をつく時には絶対に『揺らいだ香り』がするらしいのよ。よくわかんないけど。嗅覚が鋭すぎて犬並み」
その感覚はアニーだけのものなので、カッチャには正しく伝えることができない。が、そうとしか言えないため、そのまま伝える。
まだ話したこともないのだが、先ほどとは正反対に、やっていけるだろうか、という怖さがウルスラに出てくる。嘘がつけない……。
「……着替え終わりました。どう、でしょうか」
力なく、ドアを開ける。声も弱々しく、少し熱っぽい気がしてきた。病は気から、というモリエールの戯曲があるが、まさにそれかも、と足元もフラつく。




