133話
ひとつ咳払いし、アニーは落ち着く。やるべきことを見失ってはいけない。
「とりあえず、まずは飲み物からっスね。どうしましょう、クルトさんのと同じものをマクシミリアンさんにもお持ちしますか?」
今回の主役はクルトだと判断した。とすると、マクシミリアンは付き添い。同じものを提供したほうが、彼女にも今回に限っては伝わりやすいだろう。
最初からそうするつもりだったマクシミリアンは、どもりつつも同意する。
「あ、あぁ。そうしてくれるかい?」
ショコラーデの相談だったはずが、なにやらおかしなことに。ま、面白いからいいか。効率の良さよりも、興味が勝つほうに舵を切る。
奥に秘めた悪戯な心を見せないように、無垢な笑顔でアニーは承知する。
「はいっス。ちょっと待っててくださいね。ムフフ」
少し漏れた。まぁ、注文を受けたからにはもう逃がさない。楽しみだ。
邪悪なオーラを引っさげてキッチンへ引っ込んでいくアニーを見送り、マクシミリアンは頬杖をついて脱力した。見えないぶん、他の感覚がこのあとに起きる『なにか』の電波をキャッチする。
「……怪しいね。全く、あんたが変な意地を張るから」
あまり感情を表に出さない彼にしては珍しい。若さに似つかわしくない冷静さを併せ持つ、ショコラーデ王子にしては子供に挑発するなんて。
ふっ、と鼻で笑いながらクルトは意図を明かす。
「申し訳ありません。ですが、これで彼女が本気で考えたものを、ここに持ってきてくれるはずです。悪いことをしました」
まだ信じ切ったわけではない。適当に見繕って、ということは最初からないだろうが、一応念のため。
「なんだいそりゃ。まぁ、普通はすぐには信じられないけどね」
ひと芝居打たれたことにマクシミリアンは呆れつつも、より楽しみになってきた。
難しい顔で考え込みながらも、クルトは淡々と会話を続ける。
「……聞いたことはありました。カフェ『ヴァルト』に面白い店員さんがいると。とはいえ、区も違いますし行く機会もなかったのですが、あのマクシミリアンさんが薦めるわけですから。行くしかないですね」
「あの子、店長だよ」
「え」




