表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/320

109話

「……すごいところですね……」


 彼から郷土愛のようなものを感じ、ユリアーネは率直な感想をこぼした。


 彼は続けて、今後のこの店のことを考える。


「でも、パウラが……あ、パウラってのは休んでるスタッフね。あの子がまぁ、少し休みがちになるだろうから、なんとかしてみんなで支えないとね」

 

「……そう、ですね」


 ここまで愛されているお店というものを、ユリアーネは羨ましく感じる。果たして、自分達のヴァルトはどうだろうか。採算度外視、だけではいけない。しっかりと経営のことを考えつつ、スタッフだけではなく、お客様と一緒になって作っていく。


「私も、来てよかったです」


 ふいに笑みが溢れ、抽象的だが、「頑張ろう」という気持ちが湧いてきた。これくらい愛されるお店を目指さなければ。

 

「賑わってるね」


 その後、賑わいもピークを越した頃に、ダーシャが店に顔を出してきた。午前だけヴァルトで働き、午後になってブッフへ。アニーのことが気になっていたのもある。


 それを発見したアニーは、驚きの声をあげた。


「店長! どうしたんですか、ここまで——」


 そして、思い込みの激しさから、ダーシャの視野にユリアーネの姿が入らないよう、彼女を体で隠す。


 いつもながら、突飛な行動をするアニーの背中を、冷ややかな目でユリアーネ見つめる。


「……なんですか、アニーさん?」


「店長はきっと、ユリアーネさんのディアンドルを見に来たんですよ。下心しかないっス」


 ここにボク達を送り込んだのはそれが目的っスよ! と、警戒心を最大まで高めた。ユリアーネは勝手に来ただけだが、都合よく忘れている。


 はいはい、と受け流しつつダーシャはキッチンのテオに、カウンター越しに声をかけた。


「いいよ、テオ。今日は僕がやるから。みんなと飲みなよ」


 肉料理の香ばしい香りが漂うキッチンで、ダーシャの姿を見たテオは喫驚する。


「マジ? どうしたんだ急に」


 ありがたい申し出だが、唐突すぎて気後れした。こいつのことだから裏はないんだろうが、今日は忙しい。申し訳なさが勝つ。


 しかし、紺のチェスターコートを脱ぎながら、ダーシャはやる気に満ち溢れていた。


「今日はそういう日でしょ。臨時のヴァルトのスタッフだけになっちゃうけど、この店なら許される。なんでもありだからね」


 元々、同じオーナーだし。地域密着型のここなら問題はないだろう、という考え。


「……悪いな。そのうち、そっちの店で人手が足りなかったら、俺が手伝いに行くから」


 迷いつつも、テオはありがたく受け入れることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ